1月25日午後、青葉真司被告に死刑が言い渡された京都地裁では、閉廷後に遺族や裁判員、青葉被告の元主治医らが取材に応じた。そのいずれも貴重な証言であり、記録して、教訓としなければいけない重い言葉だった。

判決で『晶子のことを言ってはるな』と感じた

「検察の方、被害者支援の方、裁判所関係者の方や、支えてくれた遺族の皆さんなどに、この気持ちで今過ごせていることを本当に感謝しています」。こう語ったのは、「響け!ユーフォニアム」「涼宮ハルヒの憂鬱」などでキャラクターデザインを担当し44歳で亡くなった、寺脇(池田)晶子さんの夫だ。

「主文を聞いたとき、涙がぽろぽろ出てきた。まず安堵したのは間違いない。(判決は)被害者の立場や被害状況などに非常に寄り添っていただいた内容だと感じて、嬉しかった」

「(判決には)『晶子のことを言ってはるな』と感じる部分もあって、裁判官や裁判員の皆さんは、遺族らの意見陳述を本当によく聞いてくれたなと思った。晶子に『裁判所は事件の内容を正確に把握してくれはったうえで、判決をだしてくれたよ。死刑になったよ』って報告しよう」

判決だけでは、晶子の無念は晴れないだろう

一方で、「死刑」という重い判決を聞いても、変わらない思いもあると話した。

「これで本当に晶子が報われるのか。子どもが100%前を向いて生活していけるのか。同時にそっちの不安も正直ある。(晶子は)もっと絵を描きたかっただろうし、子どもの成長を見たかっただろうし、本当に無念だろう。青葉さん(被告)の判決だけでは、晶子の無念は晴れないだろうと思います」(寺脇(池田)晶子さんの夫)

青葉被告を治療した医師は「判決に関心ないが…」

鳥取大学病院高度救命救急センター長の上田敬博教授は、重度のやけどを負った青葉被告を治療した。「被告を生かし、裁きにかけることが、亡くなった人や遺族のためになる」。その一心で治療を続けたという。

治療が裁判につながったことについて上田教授は、「黙秘して一切発言をしない裁判を続けるのではないか、と危惧していたが、彼の言葉で答弁した、結審まで彼の中の最低限やるべきことはやったのではないか」と話した。

いっぽう死刑判決については、「判決そのものにあまり関心はない。驚きもない」とした。

現代が抱えたリスクに警告「見て見ぬふりせず事件前に食い止めるべきだ」

上田教授は、治療の間、青葉被告と一定期間関わった経験などから、犯罪の再発防止につながりうる、重要な言葉を述べた。

「こんな内容で、と言ったら失礼かもしれませんが、たくさんの人が被害にあうのは理不尽で、納得がいかない。関係ない人が巻き込まれていく社会になりつつあるのではないか」

「一方で彼と4か月だけ話をしたが、きちんと関わったら、絶対とは言えないが、どこかで今回の犯罪をくいとめることができたんじゃないか。」

「いまも同じような犯罪のリスクが潜んでいる。見て見ぬふりをせず、悲惨な事件が起こる前に食い止めるべきだ」

弁護側は判決を不服として控訴した。さらに京都地裁によると、2月7日に、青葉被告自身も判決を不服として控訴した。審理は大阪高等裁判所に移る。今度はどのような「ことば」が発せられるのだろうか。(MBS報道情報局 京都支局 森亮介 國土愛珠 宮腰友理)