京都アニメーションの第1スタジオに放火し、社員36人を殺害したなどの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判は25日、第9回を迎えた。一連の裁判の審理は「経緯・動機」、「責任能力(10月下旬~)」、「量刑(11月下旬~)」の3段階で進められることから、検察側・弁護側いずれも冒頭陳述や被告人質問をその都度行うことになっている。この日で7回目となった被告人質問は、初めて裁判官と裁判員から青葉被告に質問が投げかけられた。

「事件起こした時の気持ちは?」裁判員の問いに「『やけくそ』でした」

男性の裁判員①「あなたが事件を起こしたときの気持ちは、『やってやった』という気持ちなのか、それとも『火をつけてしまった』という気持ちなのか」。

男性の裁判員は、こう投げかけた。これまでの検察側、弁護側のテクニカルな質問とは対照的に、市民目線の「率直な疑問」をぶつけている印象を抱いた。

これに対し、青葉被告はこう話した。

青葉被告「ぶっちゃけ、やる前、やった後とに、そういう考えがあると出来ないものなんですね。検事さんの最初の取り調べでも、『後のことはどう考えていたか?』とか聞かれましたが、当時そのことに関して、ある種『やけくそ』という気持ちじゃないと(犯行が)出来ない。一言で言うと、『やけくそ』でした」

青葉被告「やり過ぎではないか…人の命を奪うほどかと悩む部分も」

同じ男性の裁判員との対話が、続けられる。

男性の裁判員①「現在は、京都アニメーションに対してどう思っているのか」

青葉被告「何度か述べたように、やり過ぎではないかと。いくら作品を盗られたからと言って、人の命を奪うほどかと思うと、悩む部分も多い。

男性の裁判員①「やりすぎというのは、人数に対するものなのか、それとも放火したことについてなのか」

青葉被告「火をつけることがこれだけの人数を巻き込んだということになると、やはり火をつけたことかなと」

こうした発言が、大切な家族を失った遺族にどれだけの悔しさや憎しみを増長させるか理解しているのかは分からないが、この日も、淡々と言葉を言い並べるだけの姿が目立った。

涙流す遺族に被告「死んでこの世から存在消えるのは、やはりそういうことなんだなって」

男性裁判官「抗議をしたり、誰かに相談したり、別の手段を検討したことはないのか」

青葉被告「例えば、単独で『女性監督』を襲うとか、弁護士に依頼したところで、京アニがパクりをやめるかというと、そうではないかと思った」

男性裁判官「『女性監督』を単独で襲おうということは考えたのか」
青葉被告「考えた」

男性裁判官「京アニに対する強い恨みは今もあるのか」
青葉被告「もう少し『やってやった』と思うのかと思っていたが、意外となんか、悩むこともたまに結構あるし、そんなことしか残らなかった」

男性裁判官「涙ながらに法廷で話した遺族に思うことは」

青葉被告「人が死んでこの世から存在が消えるというのは、やはりそういうことなんだなってちょっと思った」

「知ろうとしなかったのは罪ではないか?」裁判員の質問に青葉被告が“沈黙”回答に窮する

これまでの裁判で、青葉被告は自分の小説が京アニに盗まれたと主張していた。そして、無関係の社員らを狙った理由については、「『盗作を知らなかった』のは知る努力を怠っていたのであり、全員が同罪だ」と発言していた。

取材班では初公判から傍聴取材を続ける中、一般感覚として、この身勝手な発言には怒りにも似た感情を抱いていた。これに切り込んだのが、別の裁判員の男性だった。

男性の裁判員②「京アニの従業員の方々は、各部署で専門が違っていて、違う部署だと(盗作の)内容を知らない方もたくさんいたと思うが、そのことは青葉被告自身は知ろうとはしなかったのか」
青葉被告「・・・(20秒ほど沈黙。首をかしげながら)知ろうとしなかった部分はあります」

男性の裁判員②「青葉被告が知ろうとしなかったことは罪にはならないのか」
青葉被告「至らない部分で、努力が必要な部分だと思います」

青葉被告はこれまでの裁判で、回答に窮すると、声が小さくなったり、語尾が尻つぼみになったりする場面が多く見られた。今回のいずれの回答に関しても、傍聴席からではほとんど聞き取れないほどの、か弱い声だった。

被告人質問は、10月下旬から始まる「責任能力」に関する審理の中で再び行われることになるが、「経緯・動機」に関する審理での被告人質問は、この日でいったん一区切りとなった。青葉被告の健康状態から、そもそもどこまで会話できるのか注目していたが、想像以上に明瞭に、そして雄弁に語る青葉被告の姿が印象的だった。


次の第10回公判からは、目撃者や京アニ社長、京都市消防局の職員などの証人尋問が予定されている。