来年の春に開催予定の第96回選抜高校野球大会。その出場校を選考する上で重要な参考材料となる高校野球の秋季近畿大会の準々決勝が行われ、ベスト4が出そろいました。

【大阪桐蔭-報徳学園】

10月28日(土)には、この秋の近畿大会3連覇を狙う大阪桐蔭と、兵庫県大会を制して
1回戦も危なげなく勝ち上がった報徳学園が激突。優勝候補同士の大一番、予想通りのがっぷり四つの展開となります。大阪桐蔭が1回、4回に1点ずつ奪うと、報徳学園もじわじわと反撃、6回には6番・福留希空選手の犠牲フライで2対2の同点に追いつきます。

勝負の分かれ目となったのは7回。大阪桐蔭は、報徳学園の先発・今朝丸裕喜投手を攻めて、2アウトながら2塁3塁のチャンスを作ります。ここでバッターは4番のラマル・ギービン・ラタナヤケ選手。エース間木歩投手へのスイッチ、あるいはリスクを避けて次のバッターとの勝負も考えられる場面。報徳学園の選択は勝負。

しかし、「雰囲気に負けないように強い気持ちで打席に入った」と話したラマル選手が4番の意地を見せて、レフトへのタイムリーヒット。2人が返って、大阪桐蔭が再び2点のリードを奪います。報徳もその裏1点を返しますが反撃もそこまで。大阪桐蔭は、8回からマウンドに上がった1年生の森陽樹投手が、2イニングで1人のランナーも許さず、4つの三振を奪う完璧なリリーフ。1点差で逃げ切って4対3で勝利。3連覇に向けて、また一歩前進しました。

【近江-京都国際】

10月29日(日)には、準々決勝、残り3試合が行われました。第1試合は、滋賀の近江と京都国際の京滋対決。試合は、近江・西山恒誠投手、京都国際・中崎琉生投手、両エースによる息詰まる投手戦になります。西山投手が角度のある速球と外角への切れのいい変化球を武器にテンポのいいピッチングで京都国際打線を翻弄すると、京都国際の中崎投手はランナーを背負いながらも要所要所を抑える粘り強いピッチング。両チーム無得点のまま9回を迎えます。

9回表、近江は5番・森島佑斗選手がライト線へのツーベースヒット。両チームを通じてこの試合初めての長打で1アウト2塁のチャンスを作ります。しかし、ここでも中崎投手が立ち塞がります。続くバッターをセンターフライに打ち取ると、ファールで粘る7番の高橋直希選手に対してはインコースを強気に攻める投球で、最後は空振り三振。気迫のこもったピッチングで得点を許しません。

逆に京都国際はその裏、先頭の3番・高岸栄太郎選手がヒットで出塁すると、1アウト2塁として5番の清水詩太選手。「ストライクは全部振っていこうと思っていた」と振り返った打席は、初球を積極的に叩いてセンターへのサヨナラタイムリーヒット。京都国際が少ないチャンスをものにして2試合連続のサヨナラ勝ち。ベスト4進出を決めました。

【京都外大西-履正社】

続く第2試合は、その京都国際に京都大会で競り勝った京都外大西と大阪の履正社の対戦。
京都大会の決勝、近畿大会の1回戦と接戦を制して勢いに乗る京都外大西。この日も序盤から履正社の先発・高木大希投手に襲いかかります。1回に2点を先制すると、2回には履正社のミスに乗じてさらに1点を追加。ここから1番・谷春毅選手、2番・杉浦智陽選手の連打で4点目を奪うと、「とにかく積極的に打っていこうと思っていた」と語った5番の田中遥音選手、6番の中辻秀太が難しい変化球を上手く拾って連続タイムリーヒット。この回、打者10人の猛攻で、あっという間に6対1と大きくリードを奪います。

大量援護をもらった田中投手、履正社の強力打線相手に緩急を上手く使って7回まで1失点に迎えます。この投球に打線も奮起。8回に高木投手から貴重な7点目を奪うと、7対3と追い上げられた9回には、2本の3塁打を含む3本のヒットで10対3と再びリードをひろげます。

それでも履正社は諦めません。疲れから球が浮き始めた田中投手から、デッドボールを含む6者連続出塁。4連打で10対7として、なおもツーアウト1塁2塁、ホームランが出れば同点という場面まで追い上げます。しかし、最後はあと一本が出ず、ゲームセット。

「チームの雰囲気は最高。のった時の高校生のすごさを感じるゲームでした」と上羽功晃監督が語った京都外大西が、18年ぶりの秋の近畿大会ベスト4進出を果たしました。

【須磨翔風-耐久】

準々決勝最後は、前日に延長10回タイブレークの末に智辯学園に逆転勝ちした兵庫の須磨翔風と、社との激戦を制した和歌山の耐久の新旧公立校対決。両チームとも前日の疲れが残る中、大黒柱のエースが先発。両チーム1回に1点ずつを取り合って、5回に試合が動きます。

5回表、耐久は、須磨翔風の先発・槙野遥斗投手から2本のヒットで1アウト1塁3塁のチャンスを作ります。しかし、この試合まで幾度となくピンチを切り抜けてきた槙野投手。この場面も粘る2番の赤山侑斗選手を三振、続く澤剣太郎選手もセカンドゴロに打ちとって、ピンチ脱出かと思われました。ところが、この打球をセカンドが痛恨のファンブル。バットの先端に当たって複雑な回転がかかっていた一打、思わぬ形で耐久が勝ち越します。
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この1点で、さらに集中力があがった耐久先発の冷水孝輔投手。「勝ち越してからは落ち着いて投げようと思っていた」というように、疲れが見える中でも丁寧なピッチングで須磨翔風に反撃を許しません。

すると打線は8回、再び須磨翔風の守備の乱れから1アウト満塁のチャンスをつくると、
6番の川合晶翔選手がライトへの犠牲フライ、さらに7番の中啓隆選手がレフト線へタイムリーツーベースヒット。4対1とリードをひろげます。

「(苦しい場面でも)踏ん張ることができたのは、(昨年から)いろいろ経験させていただいたおかげ。先輩たちに感謝したい」と話した冷水投手。最後まで須磨翔風に決定打を許さず、このリードを守り抜きました。
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1852年創立(1905年創部)で初めての甲子園がぐっと近づいた秋の近畿大会でのベスト4進出。チームを率いる井原正善監督は「夢のようです。先輩から受け継いできたことがやっと花開いてよかった」と感慨深げに振り返りました。

【近畿大会準々決勝(結果)】

大阪桐蔭(大阪1位) 4-3 報徳学園(兵庫1位)
京都国際(京都2位) 1-0 近江(滋賀1位)
京都外大西(京都1位)10-7履正社(大阪2位)
耐久(和歌山1位)  4-1 須磨翔風(兵庫2位)


(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)