全国で相次ぐクマの被害。環境省によりますと、クマに襲われるなどの被害にあった人は今年4月から9月末までに全国で109人となっていて、過去最悪のペースで増えています。関西でも、今年8月に京都市左京区の比叡山の登山道で50代の女性がツキノワグマに襲われて大けがをしました。クマが人を襲う理由について、大型野生哺乳類が専門の岩手大学の山内貴義准教授は「クマは街中に出てしまった場合、ものすごく恐怖心があると思う。車や人などに遭遇して興奮したような状態になり、人に接触していくうちに怖くなってアタックする」と分析。そのうえで、もしクマに遭遇したら「とにかく距離をとって興奮させないのが重要」と指摘します。
(2023年10月24日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎山内貴義:岩手大学農学部・准教授 クマやシカなど大型野生哺乳類の専門家 環境省の研修会で「クマの保護・管理」について講義も

――我々もクマに遭遇する可能性があります。「アーバンベア(都市型のクマ)」はなぜ出てきているのかといいますと、エサであるブナの実が今年は凶作だったそうで、熊が行動範囲を広げ、人里近くに出てくるのではないかということです。

(岩手大学・山内貴義准教授)ブナの実の大凶作は原因の一つになっていると考えています。

――人的被害は、統計開始以降の最多109人となりました。実情をどのようにご覧になっていますか。

(岩手大学・山内貴義准教授)かなり危険な状態です。特に東北の方は人身被害の数が前年度をかなり更新して、まだまだ収まる気配がないので、本当に気を引き締めて取り組んでいかなくちゃいけないと考えてます。

――クマはどうして人を襲っているんですか。

(岩手大学・山内貴義准教授)本当に街中に出てきてしまうっていうのは、クマにとっても本当は街中には出たくないし、出てしまった場合にやっぱりものすごい恐怖心があると思います。その中で車とか、犬とか、偶発的に人に会ったりして、非常に興奮したような状態になります。人に次から次へと接触していくうちにもう怖くなってアタックしていく、という感じになっているので、とにかくクマから距離を取るっていうのが、非常に重要です。

――基本的に、クマは人が食べるものにも興味示すんですか。

(岩手大学・山内貴義准教授)自然にいるクマは草食がメインで、木の実やさくらんぼを食べたり、そういった感じですけれども、ただ雑食でもあるので、人の食べ物や残飯にも執着して食べたりはします。

――遭遇する可能性のあるツキノワグマは、本州や四国に生息し体長約110~150cm、体重約80~120キロと大型です。強い力と鋭い爪、時速40km以上、原付ぐらいのスピードで走るということです。推定の生息数では、関西だと京都と兵庫に多いのではないかというデータが出ています。山内先生の見解では、「クマの頭数管理だけでなく被害を与えるクマの対策が必要」ということです。

(岩手大学・山内貴義准教授)クマの管理は基本的に都道府県単位で行い、適正頭数になるように誘導する形で計画が進められ、被害が出ないよう電気柵を張ったり、草刈りをしたり対策をしているんですけども、ただどうしても被害を出してしまうクマがいます。そのクマを基本的には効率よく捕獲することも行っているんですが、なかなか捕まらないっていう現象があります。クマを捕まえるのって非常に時間と手間がかかります。なので、もうちょっと踏み込んだ対策も今後必要なのではないかと考えます。

――もしクマに出会ってしまった場合は、「クマが遠くにいる場合は落ち着いて静かに離れましょう」。クマが近くにいる場合は「背を向けずに、クマを見ながらゆっくりと後退」、そして至近距離だった場合は「両腕で顔や頭をガード、致命傷にならないように防御してください。」そしてクマと出会わないために生活の中でこちらに気をつけてください。①庭先の柿や栗を放置しない ②家庭やキャンプ場でゴミを放置しない、ということを気をつけていただきたいと思います。

(岩手大学・山内貴義准教授)特に、距離を取って興奮させないことが重要です。