性加害問題を受けてジャニーズ事務所は会見を開き社名変更を発表。性加害問題の被害者に対する補償の後は廃業するとしました。代わりにエージェント会社を設立し、その社名はファンクラブで公募するということです。この会見に藤島ジュリー景子氏は出席せず、井ノ原快彦氏が手紙を代読。その中で「ジャニーズ事務所ではジャニーだけでなく母・メリーも権力を握っていた」「私が少しでも違う意見を言うと、気が狂ったように怒り、叩き潰すことを平気でする人でした」と語りました。ジャニー喜多川氏の性加害について取材してきた元週刊文春のジャーナリスト・中村竜太郎さんは実体験として、記事に対するクレームを言いたいと呼び出された際に「5時間以上監禁されて、罵詈雑言、恫喝、脅迫めいたことを言われた」「実の娘に対してもそうだったのかと得心しました」と話し、「メディアコントロールも含めて経営面でのメリー氏の役割は大きかった」と証言しました。(2023年10月3日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

▼中村竜太郎:元週刊文春のエース記者 長年ジャニー喜多川氏の性加害問題を取材

「やはりジャニーズの名前は、取らざるを得ない」

会見でジャニーズ事務所は10月17日付で「SMILE-UP.」(=スマイルアップ)に社名変更すると発表しました。このスマイルアップ社は、被害者の補償業務のみ行う会社となります。社長に東山紀之さん、取締役に藤島ジュリー景子さんが入り、100%の株主で会社に残ります。そして、補償業務が終わった後、会社は廃業するということです。新会社を設立するという発表もありました。こちらは希望するタレント個人と個別に契約する「エージェント会社」となります。ジュリー氏は出資せず、役員にも就任しない、一切関与しないという発表もありました。社長には東山さん、副社長に井ノ原快彦さんが入るということです。

元週刊文春の記者で、ジャーナリストの中村竜太郎さん、スマイルアップが補償業務のみを行う形に関して、どんなご意見でしょうか。

(中村氏)破綻した会社を再生するプランとして、グッドカンパニー・バットカンパニー方式があるんですけれども、それにならった形で、スマイルアップという形にして補償業務を行うやり方は、おそらく妥当だなと思っています。名前に関しては「ジャニーズ」「ジャニー」っていう名前が被害者の心情を逆なですることを考えると、やはりジャニーズの名前は、取らざるを得ないなというふうに思います。一番大事なのは、これからの業務の中身です、補償をどういうふうに具体的に進めていくのかをメディアとして、あるいは世間が厳しく見極めていく必要があると思います。

――新会社、エージェント会社に関しては中村さんいかがでしょうか?

(中村氏)はい、世界のエンタメ界においてエージェント契約は主流になりつつあり、私は個人的に期待したいというのがあります。これまでジャニーズ事務所の支配下にあったというふうに考えますと、やはり関係はタレントと事務所は対等ではなかった、と言えると思います。本来タレントと事務所は対等であるべき、っていうことを考えますと、マッチしたやり方とエージェント契約っていうのはあると思うんです。
メリット・デメリットもあると思うんですけれど、日本型エージェント会社っていうのをいかに旧ジャニーズ事務所がつくっていくか、日本の芸能界においてトップ企業であるジャニーズ事務所が真摯に取り組む姿勢があれば、また芸能界も変わっていくんじゃないかなと思うんです。

ジュリー氏の手紙にみる「母親・メリー氏の姿」

――会見にジュリー前社長は出席せず、手紙でコメントを寄せました。その手紙の内容は、『ジャニーだけでなく母のメリーも権力を握っていた。少しでも母と違う意見を言うと怒る人でした。メリーの命令で取締役でしたが、事実上、私には経営に関する権限はありませんでした。会社を終わらせ、ジャニー喜多川の痕跡を、この世から一切なくしたいと思います。』約11分間の手紙、井ノ原さんが代読されました。中村さんは週刊文春の記者時代にジャニーズ事務所から訴訟を起こされたという経緯もありますが、メリー氏はどんな人物なんでしょうか。

(中村氏)私は1999年に14回にわたるジャニー喜多川氏の性加害について、キャンペーン取材をしておりまして、その後もずっと、ジャニーズ事務所はどういう成り立ちなのか、日本の経済においてどんな役割を果たしているのか、そういう記事も自分で執筆をしていたわけなんですけれど、ジャニーズ事務所の発展においては、ジャニー氏が、タレントの育成と発掘を担っていて、経営面では藤島メリー氏がですね、グリップしていたわけなんです。その両輪で発展してきたんですね。

タレント、特にSMAPが急成長していく間に、その下の世代のタレントたちが抱き合わせでどんどん大きくなっていったという経緯があります。メリー氏の果たした経営面の役割ってのは非常に大きかったんですよね。やはりメディアをコントロールしていたこともそうなんですけれども、会見で代読されましたジュリー氏の手紙を見て、私は本当に実感したことがありました。

メリー氏から「5時間以上ずっと、罵詈雑言とか恫喝とか脅迫めいたことを」

(中村氏)2010年に私が書いた記事に対してクレームを言いたいということで、メリー氏にジャニーズ事務所に呼び出されたことがあったんですけれども、強烈なキャラクターの方で、もう本当に自分の言っていることは絶対正しいというふうな、そういう方だったんです。私は「帰りたい」ってずっと言ったんですけども、5時間以上そこで監禁されまして、その間ずっと、罵詈雑言とか恫喝とか脅迫めいたことを言われてましたので、ですからそれでやっぱりメンタル的に不調をきたしてしまう人ってのは多かったと思います。

――ジュリー氏の手紙の中での記述も中村さんの体験からしてもそうだろうなという感じなんですか。

(中村氏)はいそれはもう、メリーさんに会ったことがない人だと、ちょっと何言ってるのかなっていう感じだと思うんですけど、私はそういう体験がありますから、やっぱりそうだなというふうに思いました。それが実の娘に対してもそうだったのかというふうに私の中で得心しましたね。

――救済に関してです。9月30日までに被害を申告し、補償を求めたのは325人です。11月から補償を始めるということです。補償金額や人数については、適切な時期に適切な方法で公開予定ということで、9月13日に被害者救済委員会を設置します。これまでジャニーズ事務所が依頼したことのない元裁判官の弁護士3人で構成されまして、補償金額についてもこちらに判断を一任するということです。

――中村さん、今後どれだけの方が契約を新たに結んでいくのか、どう思われますか。

(中村氏)はい、岡田准一さんの退所はニュースになりましたけれども、やはり今在籍しているタレントの方が、東山さんや井ノ原さんと歩みを合わせて居続けるのか、これを独立のタイミングだと思って離れていくのか、それは個人の自由意思に任せる形になると思うんです。岡田さんの後を受けて、他のタレントさんが流れていくとか、独立していく動きもひょっとしたらあるかもしれませんけれども、ここはやはりタレントさんの意思に任せたいと思うところですね。

そして最後に言いたいのは、「辞めジャニ」って言われる、ジャニーズのタレントさんがお辞めになった後に、これまだったら何らかの形で圧が加えられたり、例えばテレビに出られないとか、そういう忖度があったと思うんですけれども、そういうことは本当になくなればいいなと、私は切に願っています。

――会見を受けて各企業の反応です。P&Gは「ジャニーズ事務所との契約を全終了。これまで契約していた4人のタレントと直接契約を結ぶ」ということです。ロート製薬は、「事務所が考えていることは理解できた。契約については検討中」で、検討が終わるまで新しい広告活動は行わない方針です。大阪ガスは、「次の契約については事務所の対応を注視して検討していきたい。現時点ではCMなどはそのまま差し替えで検討」しているということです。そしてひらかたパークは、「地元出身の岡田准一さんとの関係を大切にしていきたい。その思いは変わりません。今後の起用も前向きに検討する」ということです。