被害額133億円の巨額投資詐欺事件をめぐり、インドネシアから移送中に逮捕された「西山ファーム」の元副社長。この事件の首謀者とみられています。5年前、MBSの記者がこの元副社長を直撃していました。

 3月13日、移送中の飛行機の中で逮捕されたのは、破産した岡山県の観光農園「西山ファーム」の元副社長・山崎裕輔容疑者(43)。桃の購入で配当を上乗せすると偽り、横浜市の女性から約800万円をだまし取った疑いで逮捕状が出ていました。山崎容疑者は投資詐欺事件を首謀したとみられていて、全国から集められた金は133億円に上っています。一体、どのような手口だったのか。

桃の輸出事業で“利益の3%を上乗せ”うたい出資者を募る

 2004年に創業した西山ファームは桃やイチゴの収穫体験で人気を集めていました。しかし、日本の果物が海外で注目されて輸出額が増加していた2015年、香港への桃の輸出事業で出資を募り始めますが、この際にクレジットカード決済を悪用していたといいます。
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 その仕組みはこうです。まず出資者は、西山ファームが指定する通販会社を通じて100万円分の桃をクレジットカードで購入。西山ファームはこの桃を「海外に転売する」と説明して、配当として利益の3%を上乗せして返金するなどと謳っていました。
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 このビジネスに深く関わっていた関係者は当時の取材にこう答えました。

 (西山ファームの関係者 ※2019年当時)「実態もないし在庫もない。自転車操業みたいにぐるぐる回していた」

 関係者によりますと、投資の対象となる桃などの商品はそもそも実在しておらず、ビジネスの構図はほとんどがうそだったといいます。

出資した人「有名な会社なので信用していた」「事態収拾を図ってもらわないと」

 また、西山ファームに500万円を出資したという男性は…。

 (500万円を出資した大阪府の男性 2019年)「岡山で有名な会社というところもあったので、そこを信用して自分はスタートしました。まさかそんな会社がそんなことをするとは思ってもみなかったですし、正直許せない、ありえないことだと思います」
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 中には1000万円以上出資した人もいました。

 (1260万円を出資した愛知県の男性 2019年)「西山ファームさんの農園は見に行きました。ちょうど行ったころはイチゴの時期だったので食べさせてもらったりとか。立派なイチゴを栽培していました」

 当初は返金があったため、事業を信じてしまったといいます。

 (1260万円を出資した愛知県の男性)「自分たちの非を認めて、早く説明して、事態収拾を図っていただかないと」

 配当の支払いが滞りはじめ、各地で民事訴訟に発展する中、2021年に事態が動きます。西山ファームの元幹部ら5人が逮捕され、その後に出資法違反の罪で有罪判決を受けました。
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 元幹部のSNSでは華やかな暮らしをうかがわせる投稿も。こうした投稿は若者の興味をひき、クレジットカードさえあれば手が出せる仕組みも相まって、被害は若い世代にも広がっていきました。

当時の従業員や関係者が“副社長の関与”に言及

 しかし、なぜ果物の栽培を手掛ける西山ファームが事件の舞台となったのでしょうか?2019年の取材当時、岡山県の農園で働いていた従業員の男性は、社長の息子が副社長に就任した後、問題のビジネスが始まったと打ち明けていました。

 (西山ファームの従業員 2019年当時)「ここが何かをしたというわけではなく、岡山オフィスと名古屋オフィスが主導でやっていた。上層部がやっていることで…」

 また、さきほどのビジネスに深く関わっていた関係者は、副社長が問題のビジネスを主導していたと語っていました。

 (西山ファームの関係者 ※2019年当時)「(副社長が)『もっと決済額を増やせ』と『もっと人を集めろ』と。どんどん増やしていくつもりでしたね」

 この副社長こそが、今年3月13日に逮捕された山崎容疑者。5年前にMBSの記者が本人を直撃していました。

「俺はうそはつかない絶対に」と直撃取材に答えた容疑者だが…

 (山崎裕輔容疑者 2019年)「間違いなくこれだけは信じてほしいんだけど、俺はうそはつかない、絶対に」

 取材に対して出資を募っていたことは認めつつも「違法なことはしていない」と主張。

 【2019年の記者と山崎容疑者のやりとり】
 (記者)「うそをついて金をだまし取ったというのはないんですね?」
 (山崎容疑者)「ない」
 (記者)「絶対にないですか?」
 (山崎容疑者)「ない」
 (記者)「信じていいですかね?」
 (山崎容疑者)「いいよ。うそをつかないっていうのはそういうこと」
 (記者)「山崎さんの知らないことがいっぱい起きたということですか?」
 (山崎容疑者)「めちゃくちゃ起きているよ。そういうことを調べてほしい」
 (記者)「警察が動いたらどうするんですか?」
 (山崎容疑者)「それはしょうがないでしょ。逆に言ったら司法の判断をきちんとしてくれた方が俺はありがたい」
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 また、多額の金を集めていた理由についてはこう話しました。

 (山崎裕輔容疑者)「とりあえずお金をたくさん集めて研究して、障がい者をたくさん雇っていたから、障がい者の人たちだけでも桃とイチゴを作れる会社にしたかった」

マレーシアに密航しようとしていたところを拘束

 しかし、山崎容疑者はその後、捜査が及ぶ前に出国。複数の国を転々として、3年前からはインドネシアへ。西部のレンパン島では出稼ぎ労働者らとともに車で寝泊まりしながら潜伏していたといいます。しかし今年1月末、マレーシアに密航しようとしていたところを海上で拘束されました。
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 (山崎容疑者を確保した警察官)「(山崎容疑者は)『友人を通じて1億5000万ルピア(約140万円)を渡す』『大金を渡すから入管に連れて行かないで』と言ってきたので危険な人物だと思った」

 また、取り調べで金の使い道について聞かれると、「たくさんの借金があり、その返済に使った」と話したということです。

 多くの人を巻き込んだ巨額詐欺事件。真相解明に向けて大きな一歩を踏み出しました。