2017年に和歌山県白浜町の海岸で、水難事故に見せかけて妻を殺害した罪に問われている男。大阪高裁は1審の懲役19年判決を支持して男側の控訴を棄却。男側は判決を不服として3月7日、最高裁に上告しました。

被告は無罪主張も1審は懲役19年判決

 判決によりますと、野田孝史被告(34)は2017年7月、和歌山県白浜町の海岸で、妻の野田志帆さん(当時28)を、何らかの方法で体を押さえつけ水に溺れさせて殺害しました。

 1審の裁判で野田被告は「殺していません」と無罪を主張。弁護側も事故の可能性を主張しました。

 和歌山地裁は2021年の判決で、救急措置の際に志帆さんの胃の中から相当量の砂が見つかった点を踏まえ、“志帆さんは意識がある状態で浅瀬で体を押さえつけられた”と判断。

 第三者が現場付近にいなかったことから、野田被告による殺害と断じ懲役19年を宣告。この判決を不服として野田被告側は控訴していました。

検索履歴「溺死 殺人」「完全犯罪 海水浴」

 3月4日の控訴審判決。大阪高裁は、砂など物的証拠の面からは「事故や自殺の可能性を完全に排除できず、他殺の可能性が相対的に高いと言えるに留まる」と指摘。和歌山地裁が他殺と断定した判断過程の一部を、不合理だと指摘しました。

 しかし大阪高裁は、事件半年前からの野田被告の検索履歴「溺死 殺人」「完全犯罪 海水浴」「保険金殺人」などや、事件前後の野田被告とその不倫相手、妻を取り巻く状況を精査。

「海水浴中の溺水に見せかけて被害者を殺害し、保険金を得る殺害計画を思い立っていたと考えるのが相当」とした上で、不倫相手には離婚を約束する一方、志帆さんやその両親に対して不倫解消を約束するなど、「実現可能性のない複数の約束が露見する絶対絶命の状況」の下で、志帆さん殺害の意思を野田被告が強めたと判断。

「殺害計画に完全に符合」大阪高裁は控訴を棄却

 「被害女性が溺水し死亡した経過は、殺害計画に完全に符合し、他殺以外によって実現した偶然は考えがたい」と断定。野田被告側の控訴を棄却しました。

 大阪高裁によりますと、野田被告側はこの判決を不服として、3月7日付けで上告したということです。判断は最高裁に委ねられます。