故ジャニー喜多川氏による性加害問題をはじめ、芸能界におけるハラスメントの告発が相次ぐ中、2月9日、お笑い芸人で実業家でもあるたかまつななさんらが「#芸能人を守る法律を作ろう」と呼びかける記者会見を都内で開きました。

 冒頭、たかまつさんは、自身がお笑い芸人としての活動中に遭遇したセクハラやパワハラ、性加害の実態と、それらに抗議の声を上げると「干される」という恐怖から泣き寝入りをせざるを得ない現状について話しました。たかまつさんは、大きな原因が芸能界の「特殊性」にあり、芸能プロダクションやメディアが圧倒的優位となる権力構造に起因していると話しました。

元ジャニーズJr.二本樹さん「夢や希望を天秤に…間違った行為」

 元ジャニーズJr.で、現在、子どもへの性暴力を根絶する活動をしている二本樹顕理さんには、自身が性被害を証言して以来、他の芸能事務所に所属していた人からも性的関係を強要された経験などの声が届いていると話し、「上の立場にいる人たちが、芸能人の夢や希望を天秤にかけ、性的関係を強要したり持ちかけたりするのは間違った行為」だと訴えました。

 10年にわたって芸能人の権利保護に取り組む弁護士の佐藤大和さん。ユーチューバーやVチューバーからの相談にも乗り、代理人として活動していますが、ハラスメントにとどまらず、過重労働や不利益な契約、退所後の芸名使用禁止や芸能活動の禁止など、芸能人の様々な権利が守られていないケースが多く見られるそうです。

 しかし、独占禁止法や下請法、フリーランス新法などの現行法では芸能事務所などの優越的地位は簡単には認められず、芸能人の権利を守る事には限界があると言います。また児童や未成年者も多く働いているにもかかわらず、芸能人は『あくまでフリーランス』であり、労働基準法で守られない点にも、大きな問題があるといいます。

韓国の芸能界と比較「国際競争からも取り残される」

 旧ジャニーズ事務所問題だけでなく、芸能界の構造的な仕組みに問題提起をしているジャーナリストの松谷創一郎さんは、日本と韓国の芸能界を比較します。韓国ではコンテンツビジネスが国の基幹産業であり、ソフトパワーとしての重要な価値を見出している一方、日本では「たかが芸能」という位置づけで、文化に対する認識の違いが芸能人の人権の軽視につながっていると説明し、このままでは国際競争からも取り残されると問題提起しました。

 たかまつさんらのグループは、弱い立場にある芸能人やクリエイターを守るためには法整備が必要だとして、2023年11月21日から署名活動をはじめ、現段階で7000筆近く集まっているということです。署名は今後、被害調査のまとめや法律案などとともに、総理大臣、各政党、文部科学省、文化庁、法務省に提出される予定です。