被災地で求められる心の支援。予備自衛官として訪問診療を行う医師を取材しました。
被災地で活動する医師 専門は精神科
石川県珠洲市の避難所で診察を行う医療チーム。陸上自衛隊中部方面衛生隊の「衛生支援隊」として訪問診療を行っています。そのチームのメンバーの一人である2等陸佐・小南博資医師(56)。小南医師は有事の際に招集される予備自衛官の医官として1月12日からこの部隊に合流しています。
(小南医師)「痛いですか?」
(患者)「何も痛くない。だけど足が重たい」
普段は四国地方の工場で産業医をしている小南医師ですが、専門としているのは精神科。これまでに東日本大震災(2011年)や西日本豪雨(2018年)の被災地でも予備自衛官として活動してきましたが、精神科医の必要性を何度も感じたといいます。
(小南博資医師)「避難所の中で、幻覚や妄想や認知症で大きな声を上げる人がいると、周りが全体が非常に怯えてしまう。入院やお薬で落ち着けたりする、私ならではの働き方があるのかなと思いました」
小南医師が1月17日に向かったのは日本海に面する大谷地区。この地区に向かう道路が地震の影響で通行止めとなり、路面状況の悪い山道へう回する必要が生じたため、医療支援がなかなか行き届いていない地域です。
小南医師は通常の診察の中でも被災者の心に寄り添う診療を心がけています。
(小南医師)「僕、子どものころ石川県に住んでいて、よく金沢に行きました。いいところですよね」
(患者)「家みんな全壊…」
(小南医師)「そうかぁ」
(患者)「頑張ってね、また来てね」
(小南医師)「はい」
被災で薬が不足…症状が悪化した統合失調症の患者
次に向かったのは小中学校の避難所。診察室を訪れたのは統合失調症を患う男性と家族。これまで薬で症状を抑えていましたが、地震の影響で薬が不足して、症状が悪化してしまいました。
(小南医師)「どうですか、息子さんの様子は?落ち着かないような感じは?」
(患者の家族)「そんなに普段と変わらないんですけど、きのうから幻覚が見えはじめたので」
(小南医師)「何か見えない声と会話されているとか、独り言を言っているとかはどうでしょうか」
(患者の家族)「見えない声にはしょっちゅう反応しています」
これまでに処方されていた薬は届きましたが、ただ単純に投薬を再開すればいいというわけではありません。
(小南博資医師)「お薬を中断している場合、一気に再開すると重大な副作用が起こりますので、お薬を一部減らしてお渡ししようと思っています」
こうした専門的な知識を持つ医師は被災地に多くいるわけではありません。続く避難生活。精神疾患を患う患者にとっても厳しい環境が続きます。