1月1日に発生した能登半島地震。今回の地震で『液状化』による大きな被害を受けた石川県の内灘町で、京都大学防災研究所などが現地調査を行いました。専門家はわずかな傾斜が被害拡大の一因と考えられると話します。

 石川県金沢市から車で30分、自然豊かなベッドタウンとして多くの人が生活する内灘町ですが、今回の地震で液状化による大きな被害を受けました。
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 (MBS河田直也アナウンサー)「道路がめちゃくちゃに割れています。ここもやはり道路の部分が上にぐっとせりあがってしまった、隆起してしまったということだと思われます。信号機なんですけれども、私が手を伸ばせば届くようなそんな高さです。だから地面が上がって信号機が近くなった」
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 家が大きく傾いてしまった西田豊治さん(75)は…

 (西田豊治さん)「(家に)入ったら気持ち悪くなるわ」

 テープを廊下に置くと転がっていってしまうほどです。

 (西田豊治さん)「20cmあるから。(廊下の高低差が)20cmある」
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 家の裏手にある畑もまるで地中で波が起こったかのように隆起していました。敷地全体が傾いてしまったという西田さんは次のように話します。

 (西田豊治さん)「(Q建物や納屋は今後どうする?)これは壊すしかない。あんなとこに絶対に住めない。余震でも来たら大変なことになる」
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 1月14日、あまりにも広域な液状化の被害に、専門家も現地調査に乗り出しました。京都大学防災研究所の上田恭平准教授など、地盤の面から見た防災を研究・解析するチームです。ただ、これまで数多く液状化による被災地を目にしてきた専門家でも、今回の現場を前に思わず立ち尽くしてしまいました。
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 (京都大学防災研究所 上田恭平准教授)「(被害の)全部が液状化が原因かどうかというのはまだわからないですけれど、液状化に関連しているという意味だと、なかなかこの被害の大きさというのは(これまで)ないですね…。(地震が)弱いことはないんですけど、このあたりも震度5弱から強くらいだと思うので、ものすごい大きいことはないので、なぜこういう形でここに特に…」
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 専門家ですらこれまで見たことがないという今回の被害。車で進入できる場所はもちろん、歩いて調査できる範囲を写真で記録しながらできる限り見ていきます。道路などに噴出して溜まっている泥からも得られる情報があると言います。

 (京都大学防災研究所 上田恭平准教授)「砂の粒が比較的そろったものが多い。いろんな粒、大きい粒とか小さい粒とか混じりあっていると、それがうまいことかみ合って強い。大きな粒の間に小さな粒が挟まってそれが抵抗してくれるイメージなんですけども、同じ粒の砂しか含まれていないと液状化に弱いと言われている」

 詳しい調査の必要はありますが、元々土地自体に含まれる砂が要因の一つと言えそうです。
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 さらにもう一つ、調査チームでは気になることがありました。後ろに丘が見える場所では被害が見られないにもかかわらず、そこから南側に行くと地面が波打ち一気に被害が拡大します。ここまで同じ地域で被害の差が出ることは珍しいと言います。
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 この被害拡大の一因と考えられるのが『わずかな傾斜』だと上田准教授は話します。

 (京都大学防災研究所 上田恭平准教授)「あちらの標高が高くて、こちら側が低いので、(傾斜で)全体的に一様に滑っている。液状化自体、普通の水平な地面で起こると噴砂とかで被害が出るんですけど、なかなかここまでの被害にならないはずだと思います。わずかな傾きかもしれないですけど、ちょっと傾いているということだけでも、地面が流体のようになるので、滑りが生じてここまでの(地形の)変状になったのではないかと思っています」
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 上田准教授が推測するメカニズムがこうです。この地域は丘側がやや標高が高く、そこから河北潟の方へ緩やかに傾斜した地形となっています。ここで地震による液状化が起こった場合、地面の下でもこの傾斜に合わせて流動化した泥や水が流れていく形になります。

 この流れが道路などの固い構造物にぶつかると、圧力を逃がすために波のように上へとせりあがることとなります。その結果、標高の低い側に隆起やそれによる沈降といった大きな地盤の変動が見られる結果になったということです。

 ただ、ここまでの被害になった理由は一つではないため、現状ではまだわからないことが多いといいます。

 (京都大学防災研究所 上田恭平准教授)「場所によって、被害が起こっているところと、隣の筋だとそれほど変形していない部分もあったりするので、そこはちょっとこれから調査を本格的にしないといけない。かなり広域で被害が起こっているので、(他のチームとも)分担と言いますか、それぞれエリアを分けながら調査を続けることになるとは思っています」
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 気になるのは今後の安全性です。住宅に被害を受けた長原克信さん(64)は次のように話します。

 (長原克信さん)「自分はやっぱり生まれてからここに住んでいますので、やっぱりここに戻ってきたいというのはありますけど。とりあえずは一回落ち着いてからまた家族で相談しながら」
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 しかし、上田准教授は次のように話します。

 (京都大学防災研究所 上田恭平准教授)「現状でこのレベルの被害が起こっているので、(再液状化の)リスクは今後もあり得るというのはなかなか否定するのは難しい」