能登半島地震の被害は限定的だったものの「観光客の減少」に悩む石川県金沢市。被災地を応援する気持ちで観光に来てほしいと思う一方で、声を大にしてなかなか言うことができないと現地の人は話します。
1月1日の地震で震度5強を記録したものの被害は限定的だった金沢市。市内の多くの観光地が通常通り営業を続けていますが、今“ある問題”に直面しています。それが「観光客の激減」です。
(石川県 馳浩知事)「奥能登は厳しい状況ですが、金沢や加賀の観光地の交流を絶やすことは考えておりません」
1月13日、取材班が金沢市内を取材すると…
(タクシー運転手)「(観光客は)やはり少ないです。(Q地震が影響している?)そうです。観光客がグンと目に見えるほど少ないです」
普段は多くの人でにぎわう金沢屈指の人気スポット「ひがし茶屋街」にも、観光客の姿はほとんどありませんでした。
(茶房・素心 加藤力さん)「今は人はいないですけど、とりあえず定休日以外はオープンしようかなと。大変なのは大変なんですけど、それでも地元の方とか心配して顔出してくださったりしますし、自分たちにできることはそれぐらいしかできないので」
国の重要文化財となっているお茶屋「志摩」。江戸時代から残る建物内で和菓子などを楽しむことができ、震災以降も休まずに営業しているといいますが…
(志摩 島美栄子さん)「もうほとんど歩いていませんさかい、いらっしゃっていません。みんな生活がかかっていますし、私たちも営業をしないと、お菓子を頼んだりお茶を頼んだり全部ストップしないといけないんですよね。だからお菓子屋さんも大変だし、みんな影響は受けています」
この場所で観光案内のボランティアを長年行う男性は…
(観光ボランティア)「がっくりですね。(観光客は)激減ですね。来ていただけるだけで感謝です。地元を活性化するっていうんですかね。(石川県を)応援する気持ちで来ていただきたいと思います。我々もそのお手伝いをしたいです」
生鮮食品の店などが並ぶ「近江町市場」の様子は...
一方、金沢市民の台所と呼ばれる「近江町市場」。生鮮食品や飲食店など約170のお店が軒を連ねる観光スポットですが、こんな影響も…
(大松水産 大井正紀さん)「輪島のノドグロ自体、これが年末に作ったやつ(一夜干し)なんですけど、これが最後です、事実上。(Q輪島港がダメになっているから?)そうですね、輪島港をもう一回やろうと思っても、埋め立ててもう一回作り直すしかないので、3年~5年かかっちゃうので」
白身のトロともいわれる高級魚・ノドグロの産地として有名な石川県。その中でも県内一の漁獲量を誇る輪島港が大きな被害を受けたため、今後しばらくは輪島産のノドグロがとれない見通しとなっています。
北陸でとれた新鮮な魚を使った海鮮丼が自慢のお店「海鮮丼いちば」では、震災以降、客足が10分の1にまで減少したといいます。
宮崎から観光にやってきたという男性に話を聞きました。男性はこの時期に金沢に来ていいのか悩んでいたといいます。
(宮崎県からの観光客)「今回、能登の地震があった時に行っていいのか悩んだ。そしたら、行かないんじゃなくて行ってお金を使うことも地元のためになるというニュースを見たので、だったらやっぱり行こうかなと。金沢市だけを見たときには危なくないと素直に思いましたし、観光に来て素直に楽しめると思いました」
しかし、店主は能登の被害を思うと金沢に観光に来てほしいと声を大にしてはなかなか言えないと話します。
(海鮮丼いちば 坂尻保さん)「能登は輪島朝市とかね、商売はしばらくできないと思います。金沢はまだそんなに被害はなかった。だから、自分らだけが昔みたいに忙しくても、何か申し訳ないです。だけど、自分らも生活があります、商売もあるし、やっていかないといけない。そのあたりの心の葛藤があります」