ゴミ拾いを競技にした日本発祥の新しいスポーツ「スポGOMI」が今、注目を集めています。ゴミ拾いに青春をかけて全国大会優勝を目指す高校生たちに密着しました。

“ゴミ拾いの甲子園”優勝目指すのはマリンエンジニア志望の高校生

 今年10月下旬、京都府宮津市で「スポGOMI甲子園・京都大会」が開催されました。「スポGOMI甲子園」とは、3人1組のチームを結成した高校生たちが、決められた制限時間の中で規定エリア内のゴミを拾い、その量と質をポイントで競うものです。
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 京都大会には21チームが出場。優勝したのは、海洋高校Fチームで、東京で開催される「スポGOMI甲子園・決勝大会」への出場が決まりました。
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 海洋高校でチームの中心の齋藤喜幾くん(16)。中学まで東京にいた齋藤くんは、家族で宮津市に移住してきました。そこで偶然出会ったのが「スポGOMI」でした。

 (齋藤喜幾くん)「スポーツならば楽しみながら全力でやるっていうのは自分の中ではあるので、体を動かしてゴミを探してっていうコンセプトどおりのことをして、動いたら動いただけ疲れるんですけど、その疲れもまたゴミを拾ったっていう達成感とともに心地がいいと思って参加できています」
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 齋藤くんが通う京都府立海洋高等学校(京都・宮津市)は、水族館の飼育員や養殖業者など海のスペシャリストを育成する学校です。

 (齋藤喜幾くん)「マリンエンジニアになりたい。船を動かすのではなくて船を造る側の人間になってみたいと思っていて、大学に進学してより詳しいことをプラスアルファで勉強したいなと思っています」
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 学校では、岩ガキの養殖や底引き網漁などの特別授業があります。さらに、底引網漁で獲れた魚の販売も授業の一環です。海が好きで、海に関わることが多いため、みんな環境問題への思いは人一倍です。

『細い通りをぬうようにしていこう』大会前に作戦を練る3人

 決勝大会5日前、授業終わりにチーム3人が集まり、当日の作戦を練っていました。
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 【作戦会議の様子】
 「公園あるやん?公園とかでもたばことか結構集められる」
 「前回の学びを生かすんやったら、細い通りをぬうようにいけたらいいなあと」
 「逆に大通りは通らんほうがいいかもしれんな」
 「川の橋の下、団地付近、ここを重点的に探していくのでOK?」
 「よしOK!これをインプットして現地で生かせるようにしよう」

決勝当日…全国から猛者たちが集結 齋藤くん「しっかりチームワークを発揮していきたい」

 迎えた決勝当日。会場に続々と現れる各地の高校生たち。今年は全国40道府県の約800チームがスポGOMI甲子園に参加し、各地区の予選を勝ち抜いた高校生40チームが決勝に集まりました。
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 決勝大会の大きさに齋藤くんたちは少し緊張気味の様子。

 (齋藤喜幾くん)「1週間以上前から作戦は練ってきたので、それをやっぱり計画どおり実行できたらなと思います。前回みたいに計画どおり実行できたら優勝へと近づけるので、しっかりチームワークを発揮していきたいと思います」
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 そして、日本一をかけた戦いの火蓋が切られました。今回、ゴミ拾いが行われるエリアは千葉大学墨田サテライトキャンパス(東京・墨田区)から約1.5km圏内。「走ることは禁止」「交通ルールを守る」「私有地には入らない」など21の注意事項を守り、制限時間45分で競います。
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 拾ったゴミのポイントは「たばこの吸い殻100gで50ポイント」「ペットボトル100gで40ポイント」などと、ゴミの重量をかけあわせて勝負が決まります。

作戦は『誰よりも早く、機動力でかき回す!』

 齋藤くんらは作戦どおり、目指している場所にまっしぐら。この素早い動きはまさにスポーツです。

 (齋藤喜幾くん)「(Q役割分担をしている?)(チームメイトの)ひなたがタイムキーパーで、自分はゴミをコレクトして、(チームメイトの)ゆうやがマップを見て目的地に向かいます」
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 海洋高校Fチーム、息もぴったり。事前の作戦どおり、ほかのチームともすれ違いません。ライバルの通っていない道には、まだゴミが多く残っています。
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 (齋藤喜幾くん)「やっぱり戦略を練ったから人がいないですね。(Qこれは作戦どおり人がいないって感じ?)そうですね、誰よりも早くっていう、機動力でかき回すっていう作戦を練っていて。ゆうや!再度マップ確認!」
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 しかし、ほかのチームも負けてはいません。各チーム、次々にゴミを集めていきます。
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 海洋高校Fチームは作戦どおり、目的地の団地に到着。ゴミは落ちているのでしょうか…?

 「あーめっちゃある!」
 「勝った!これは勝った!」

 齋藤くんの予想が的中し、ゴミが集まる速度がさらに速まります。
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 「こっから広がろ、範囲が広いから。10m間隔で広がって、30m一気にカバーする」

 (齋藤喜幾くん)「(Q齋藤くんはこの辺は土地勘あるの?)そうですね。昔、この団地でよく遊んでいて、慣れ親しんだ団地でもあるんで。それを生かして」
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 (引率の中島先生)「普段の実習もこれくらいてきぱきと行動すると作業量も変わってくるんですけどね。すごい動きです」

45分間の“熱きゴミ拾い”が終了…果たして結果は?

 45分の制限時間を終えて、会場に戻ってきた海洋高校Fチーム。ほかのチームが収集したゴミの量を見て…

 「あー、結構やってるな…」
 「うわ猛者や、まじで猛者しかおらん。やばい終わったかもしれん…」
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 海洋高校のゴミ収集量は6.95kg。これにペットボトルやたばこの吸い殻などの各ポイントが加算されます。
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 今回、40チームが拾ったゴミの量は383kg。これだけのゴミが半径1.5km圏内に落ちていたのです。
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 いよいよ結果発表です。優勝は…

 (司会)「優勝は『大分県代表・東明選抜Ver2.0』のみなさんです!」

 海洋高校Fチームは19位でした。目指していた優勝にはたどり着けませんでしたが、悔いなくやりきった3人。
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 (齋藤喜幾くん)「スポGOMIは、自分もやってわかったんですけど、めちゃくちゃ楽しい競技。ゴミを拾いながらスポーツをするっていう、競技精神とボランティアの融合はとてもすばらしいと思うので、もっと多くの人が参加してほしいです」

 仲間と真剣にゴミを集める喜び…これぞスポーツ!齋藤くんたちの青春はこれからも続きます。