漬物に青春をかける大阪偕星学園高校キムチ部。去年4月に設立したばかりで、現在は部員12人で活動しています。今年4月にはなんと「全国漬物グランプリ」に初出場で初優勝という快挙を成し遂げました。そんなキムチ部に今回、さらなる大きな動きがありました。

 (大阪偕星学園高校 太田尚樹専務理事)「よく言う信じられないっていうやつですよね」
 (高麗食品 黄成守工場長)「すべてが新しい取り組みというか」
 (宮本商店 宮本翼成さん)「よく頑張って、すごいことやと思います。素直に」

 大阪偕星学園高校に去年誕生したキムチ部。1年半の活動期間で彼らが成し遂げたこととは…。取材陣も驚いた!キムチ部の進歩に密着しました。

1からつくるオリジナルキムチ!プロにアドバイスをもらいにいくことも

 キムチ部の活動場所は学校の食堂です。今年1月、そこでの活動の様子を取材しました。

 (高校1年生(当時) 花田瞳吾くん)「ベストが1日おいたら。水の出方が違います」
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 白菜を塩漬けする作業に、オリジナルの漬けダレづくりなど、日々研究を重ねながら本格的なキムチをつくっています。慣れた手つきですが、顧問も部員もみんな初心者からのスタート。

 (高校2年生(当時) 栗川大輝くん)「めっちゃ辛い」
 (高校1年生(当時) 柳原洸樹くん)「うんうん、わりと辛めやな」
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 前例のない部活だけに手探りの毎日です。
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 部活動はキムチをつくるだけではありません。その道のプロのもとに足を運び直接アドバイスをもらうことも。去年12月、部員らがやってきていたのは大阪コリアタウンです。

 (部員にアドバイスする宮本翼成さん)「おいしくなっている、前より数段。十分これでも。白菜がちょっと柔らかすぎるんやわ。塩のやり方をもうちょっと考えたらええと思う」

 (宮本商店 宮本翼成さん)「何にしても興味・好奇心を持つのはいいことやと思うから、自分の教えられる範囲はできるだけ教えるようにしている。かわいらしい」

「漬物グランプリ」に挑戦!試行錯誤の末に完成したのは…

 キムチ部は去年4月、コリアタウンの近くという土地柄を生かしたこの学校ならではの学びをと、学校側と栗川大輝くんたちが協力して立ち上げました。
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 (大阪偕星学園高校 太田尚樹専務理事)「夢があることを子どもとできたらいいなと思ったので。到底及ばないんですけど『近代マグロ』みたいな感じってかっこいいじゃないですか。そんな感じで『偕星キムチ』ってできたら楽しいよね、みたいな」
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 そのキムチ部が今回初めて挑んだのが「漬物グランプリ」。一流メーカーもエントリーする漬物創作レシピの全国大会で、その学生部門に応募することにしたのです。

 (キムチ部顧問(今年2月当時) 沖田仁美先生)「大豆ミートを下味するんですけど。そぼろの味」
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 渾身のレシピはヘルシーで栄養価の高い大豆ミートのそぼろを1年間改良を重ねてきた白菜キムチと掛け合わせた自信作。ごはんにかけると箸が進んで止まらない、そんな味を目指したその名も「×(かける)キムチ」です。

 (栗川大輝くん)「ちゃんとキムチの味もして、大豆ミートにつけた味もちゃんとしているから、おいしいかなって思います」

創部から1年で快挙!歓喜の瞬間

 今年4月、迎えた漬物グランプリの結果発表の日。学生部門には16校が応募。会場にはキムチ部の姿が。

 (栗川大輝くん)「めっちゃ緊張します。きのう夜からずっと緊張して、寝られへんかったから…」

 グランプリに輝くのは1校のみです。

 (結果発表の様子)「1作品目は、福島県立白河実業高校…」

 グランプリの発表は最後。キムチ部の名前はなかなか呼ばれません。そして。
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 (全日本漬物協同組合連合会 野崎伸一会長)「漬物グランプリ2023学生の部、グランプリは…大阪偕星学園高校。代表・栗川大輝さんの『×キムチ』です。おめでとうございます」

 (大阪偕星学園高校 太田尚樹専務理事)「え~信じられへんわ」
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 初出場で初優勝という快挙。キムチ部の大きな目標が達成された瞬間です。
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 (栗川大輝くん)「大阪偕星学園高校のキムチ部は新設1年目なのですが、このような賞をとれて、とても光栄に思います。このキムチは地域のみなさんとつくったキムチなので、早く地域のみなさんに伝えられたらいいなと思っています」

グランプリ受賞の次は…なんと商品化!?

 夢にまで描いていたグランプリ受賞ですが、キムチ部の躍進はここで終わりませんでした。興奮冷めやらぬ中、8月26日にキムチ部がやってきたのは大阪市内にあるキムチ工場。約30種類のキムチを1日に10トン以上生産する大手のメーカー「高麗食品」です。実はグランプリを受賞した「×キムチ」をなんと商品化するという話が持ち上がったのです。
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 (高麗食品 黄成守工場長)「大豆の中の臭みを消して、中にどんどん下味をいれる。こっちは大豆の外にまとわりつかせる」
 (栗川くん)「コーティング?」
 (黄工場長)「そうです」

 市場での流通を見据え、味付けの工程などに改良を加えたといいます。製造現場は部活の食堂の厨房とは比べ物にならないくらい大がかりで本格的。
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 (黄工場長)「これがヤンニョムですね。キムチヤンニョム」
 (キムチ部)「おおすげえ…」
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 大容量の「×キムチ」があっという間に出来上がっていきます。みんな釘付けです。
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 さっそく出来立てを食べさせてもらうことに。納得のいく味になったのでしょうか。

 (栗川くん)「うまい」
 (黄工場長)「普通にごはんほしいですね、これ」

 ごはんのお供というコンセプトにしっかり沿った出来栄えです。
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 これまで様々なキムチを製造してきたという工場長ですが、今回、学生だからこその斬新な発想と味に魅了され商品化を提案したのだといいます。

 (高麗食品 黄成守工場長)「今までこんな肉の食感があるキムチってなかったので、すごく斬新なキムチになったなと。僕たちの力だけではこういう商品は作れなかったので、こういうきっかけをもらえたのはすごく感謝しています」

いよいよ「×キムチ」が店頭に…お客さんの反応は?

 9月2日、「×キムチ」を販売する店舗にやってきたキムチ部。実はまだ部員たちは完成した「×キムチ」を見ていません。どんな商品になったのでしょうか?

 (イトーヨーカドー津久野店 渡辺剛史マネージャー)「商品登場します。拍手でお願いいたします」
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 幕を引いてみると、商品には「キムチ部」の文字はもちろん、側面にはみんなの写真が。
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 (柳原くん)「キムチ部監修って書いてる…かっこいいよな」
 (松本さん)「あ、写真付いてる!」
 (栗川くん)「こんなん普通ないですよね、自分たちの顔が載るなんか」
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 「×キムチ」が店頭に並びお客さんの目に触れるという夢のような光景。
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 (店内で売り込みする部員)「いらっしゃいませ、よかったらご試食いかがですか~」

 部員たちも漬物グランプリの賞でもらったお揃いのエプロン姿で自らお客に売り込みます。
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 (栗川くん)「日本のそぼろと韓国のキムチと…」
 (お客さん)「そぼろ肉が入ってるんやね」
 (栗川くん)「『かける』っていうのはそぼろとキムチが“かけ”あわさってますし、白米とか焼き肉に“かけ”てもおいしいっていう、ダブルミーニングでの『×キムチ』になっています」
 (お客さん)「なるほど、わかりました。じゃあ1ついただきます」
 (栗川くん)「ありがとうございます」

 他にも。

 (お客さん)「どんどんいける、どんどんいけます。ごはんあったら最高」
 (お客さん)「あっさりしていて酸っぱくないし、おいしいかも」
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 次々と手に取るお客さんが。順調に売れていきます。クラスメイトも応援に駆けつけてくれました。
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 (松本さん)「ラベルのデザイン見た?うちらの写真載ってる」
 (同級生)「見た見た。すごいと思います。初出場で初優勝して、なんかすごく自慢できます」

 この日売れたのは94個。店内のキムチの中で売上トップです。

躍進止まらぬキムチ部の『次の目標』は…

 0から始まったキムチ部の活動。仲間と地道に取り組んだ1年半は、想像もしていなかった大きな結果につながりました。

 (栗川大輝くん)「いろんな先生方とか部員の協力があって、ここまで大きな部活に成長できたのかなって思います」

 1つの夢をかなえたキムチ部。栗川くんが考える次のステージとは?

 (栗川大輝くん)「自分で考えているのは、この先グローバルに活動していけたらなって思います。(Q次は世界?)そうですね、本場の韓国の学生さんとか企業さんとかとも一緒に商品を作っていけたらなと」