人気の一方で価格高騰のため窃盗なども起きている『ポケモンカード』。購入時に1枚70円ほどのものが、1000万円になることもあるということです。価格高騰で「子どもが簡単に手に入れることができない」「ゲーム自体に悪影響が出るのでは」…ファンたちは複雑な思いを抱えています。

ポケカに夢中の7歳 父「人見知りするタイプだったが年上の子にも話しかけるように」

 神戸市に住む小学2年生の白数結人くん(7)。毎週末、地元のサッカーチームでコーチである父・白数裕士さんとともに汗を流します。
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 そんな結人くんがサッカーと同じくらい夢中になっているのがポケモンカード、通称「ポケカ」。ゲームで使うために持参した60枚のカードの中から相手の戦略に応じてポケモン同士を戦わせるカードゲームです。
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 そんなポケカをサッカーと同じくらい愛する結人くん。家の中にはポケモンのグッズがたくさんあります。
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 結人くんがポケカを始めたのは5歳の時。文字や計算の勉強になればとお父さんに勧められて始めましたが、こんなメリットもあったといいます。

 (父・白数裕士さん)「人見知りするタイプだったんですけど、6年生5年生の子にも物おじせずに話しかけるようになりましたし、人間面と勉学の部分がプラスになったというのが本人によかったのかなと」

中学生&30代が互角の勝負!コミュニケーションツールとしての一面

 実際にゲームをする人たちが集う場所はどのような様子なのでしょうか。「カードショップミント三宮店」を訪れると、互角の勝負を繰り広げる2人組の姿がありました。2人は中学生と30代です。

 (30代のポケカプレイヤー)「年齢違うとこんなことない限り、会うことなんてないじゃないですか」

 ほかのプレイヤーにも話を聞きました。

 (ポケカプレイヤー)「(Qお子さんとポケカをやっている?)はい、一緒にやります。息子に全然勝てなくなってしまって…ずいぶん強くなりました」
 (ポケカプレイヤー)「机の上で、対戦相手のことは何もわからないけど、対戦を通してコミュニケーションがいっぱいとれるのがすごく面白くて、終わったら友達みたいになるのがポケモンカードの面白いところかなと思います」

 職業・年齢・性別・住んでいる場所も違う人たち。ポケカを介することで会話が生まれたり友だちができたり。ポケカはコミュニケーションツールとなっているのです。

一方で…価格高騰により『盗難』『偽造』の問題も

 その一方で、こんな問題が起きています。今年7月、静岡県内にあるホビーショップで、ポケカが100枚以上盗まれました。店内の防犯カメラを確認すると、入口を壊して店内に侵入する人物が一目散にポケカのショーケースに向かい、カードを次々とカバンに入れていきます。被害額は100万円(取引価格)相当に。同様の被害が全国で起きていて、逮捕者の中には「SNSのバイトに応募し、指示を受けてやった」と供述するものも。闇バイトの標的にもなっているのではと言われています。
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 なぜポケカがこうした犯罪の標的になるのか。背景にあるのは価格の高騰です。

 (カードショップミント三宮店 毛利優介副店長)「(Q店で一番高いカードは?)今だと『ニンフィアVMAX』というカード。ポケモンの中でも結構人気なニンフィアというキャラクターのカードで、値段は今29万8000円で販売しております」

 発売時の2021年5月は5枚で168円(税込み)だったものが、1枚で約30万円に。さらに…。
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 (毛利優介副店長)「こちらは、2018年頃に出していた買い取り表です。この中で、『シロナ』は一番高い6000円の買い取りなんですけど、今だと10万円にも達するくらいのカードになるかなと思います」

 希少価値が高いカードはコレクターの標的になるため価格が高騰。それを受けて店ではショーケースに鍵をかけ、高額なカードはサンプルを展示し、本体は金庫などで保管しています。
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 その上、一部で偽造されたカードが確認されたことから店側の負担も増えているといいます。

 (毛利優介副店長)「高額なカードと偽物は明確な見分け方がなくて、見分けるのに経験も必要になりますので、アルバイトスタッフは高いカードを扱うのが負担になってきているというのは聞いている」

手持ちのカードが一時期1000万円に!?

 こうしたポケカの高騰はゲームを楽しむ人たちにとっても大きな問題となっています。兵庫県西宮市の介護士でポケモンカードプレイヤーの藤田歩夢さん(33)。
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 ワンルームの部屋には所せましとポケモングッズが並んでいます。幼いころから、筋金入りのポケモンファンです。

 (藤田歩夢さん)「今が33歳なので、7歳とか5歳からと考えると27、8年くらい。アニメのポケモンが始まってからほぼ一緒に遊んでいたのかなというイメージです」
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 ポケモン好きが高じて3年ほど前からポケカを始めましたが、ある日、手持ちのカードが“大変な状態”になっていることに気が付いたといいます。

 (藤田歩夢さん)「この『アセロラ』というカードと『リーリエ』というカード。アセロラはお店だと500万円程度で販売されている」

 アセロラは、試合の優勝賞品として手に入れたカードですが、400枚ほどしか発行されていないことから、一時は500万円の値がついたことも。さらに…。
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 (藤田歩夢さん)「リーリエは300万程度なんですけど、一時期はこれが1000万円になったり価格がバグっていて」

ゲームを楽しむためのカードなのに…大会で主催者側「使わないでほしい」

 高額であっても、藤田さんにとってはポケモンカードゲームを楽しむために手に入れたカード。気にせず多くの人が参加する大会で使っていたところ、主催者側から「使わないでほしい」と言われてしまいました。

 (藤田歩夢さん)「『盗難とかあったら補償とか責任持てないし、すごく高いからやめてほしい』と言われて。ただ、家に持っておくにも家の中で一番高いものになる可能性が高いので、怖いなと思って、安心するために銀行に預けています」

 普段は銀行の貸金庫に預けているためゲームで使うこともできず、手にとって眺めることもほとんどない状況。大事なカードなのでどんなに高くなっても売るつもりはありませんが、こうしたことが続くとゲーム自体にも悪影響があるのではないかと懸念しています。

 (藤田歩夢さん)「カード1枚が札束っていうレベルじゃなくなってくるので、『高額カードは怖いから使うのやめてくれ』とかそういう制限がかかってきてどんどん『面白くないなこのゲーム』となってみんなが辞めていくのは怖いかなと思っています」

 実際、こうした価格の高騰から、転売を目的とした購入者が増えたことでカードの販売日には長蛇の列ができるように。誰もが気軽に買えるものではなくなってしまいました。

「子どもが簡単に手に入れられなくなって…かわいそうというか残念」

 ポケカにはまって2年の白数結人くん。大会にむけた特訓の前にお父さん、なにやらハサミを使って作業中。

 (白数結人くん)「練習に足りないカードがあるから切っている」
 (父・白数裕士さん)「入手しにくくなってからやるようになりましたね。カードがそもそも買えないとか、ほしいカードのパックを買えなかったりするので」
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 自分では持っていないものの相手が出してくる可能性があるカードは、コピーをしたもので念入りに対策。工夫をして今の状況を乗り切っていますが、自身も子どものころからポケカを楽しんできたお父さん。複雑な思いがあります。
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 (父・白数裕士さん)「寂しいですよね。子どものために作られていたものが子どもが簡単に手に入れられなくなっていて、サッカーの友達も『やったことはない』『やりたいけど買えない』とたまに聞くので、それはかわいそうというか残念ですよね」

 世代を問わず愛されてきたポケモンカード。急激なブームはプレイヤーたちに何をもたらしたのでしょうか。