阪神梅田本店で開催されている恒例催事「質流れ品大バザール」。ブランド品の価格も上がる中、中古品のニーズはより高まっていて、今回は18万点が出揃いました。そんな人気の催事を支えているのが、バイヤー歴20年以上の連藤誠一郎さんです。開催までの裏側に迫りました。

18万点の商品がずらり!阪神梅田本店の「質流れ市」支える熟練バイヤー

 8月30日、コロナが5類に移行してから初となる「質流れ品大バザール」が阪神梅田本店で始まりました。全国約30の質店が集結してブランド品などを販売します。
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 輝きも値段も格段。高級ジュエリーブランドのブレスレット(税込み3980万円)に、10カラットの大粒ダイヤが光るリング(税込み1990万円)など、会場には目を見張るような高級品がところせましと並びます。

 (客)「(Qお目当ては?)時計。(Q予算はズバリ?)200万円まででしょうね」
 (客)「毎年来ているんですけれどもすごく楽しみで。何か掘り出し物がないかなと」
 (客)「就職祝いのカルティエの時計を購入したところです」
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 1日で4億円を売り上げたこともある人気の催事。それを一手に取り仕切るのが阪神梅田本店OMO販売促進部催事部企画・商品担当バイヤーの連藤誠一郎さん(64)です。

 (連藤さん)「これだけ一同に商品を見られるというのはなかなかないことですし、いい商品をいっぱい集めていますので見ごたえはあると思います」

 質流れ市開催までの連藤さんの2か月間に密着です。
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 6月初旬、連藤さんの姿は会議室にありました。

 (連藤さん)「テーマがありまして『集めきろう』と。新古品とか未使用品をとにかく集めきろうと」

 今回、連藤さんは集客を見込んで前回の1.2倍となる約18万点を全国からかき集める目標をたてました。この日は最新のニーズを聞き取ろうとファッションに強い担当者2人を交えて打ち合わせです。
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 (担当者)「小さめのバッグ。本当にポシェットとして、ちょっと出かけるくらいですね」

 今回、注目する1つが、キャッシュレス化に伴う「小ぶりのバッグ」。参考に小さなバッグを持ってきたはずが、会議ではさらに小さいものを求める声も。18万点を集めるとともに連藤さんには“あるこだわり”がありました。

 (連藤さん)「グレードの高い商品をどれだけ集めるか。質店さんを回って自分の目ですべて商品を通して、その中でもいいものを今からどんどん探してうちに出店していただくと」

 「百貨店クオリティー」の担保された商品を集めること。それが連藤さんのモットーです。

質店との値下げ交渉で“粘り”を見せる連藤さん

 神戸の質店「鑑定質屋ゲンロク」を訪れた連藤さん。催事で良い商品を売り出してもらうための交渉にやってきました。

 (連藤さん)「どうです?1押し2押し3押しとかいろいろ商品あると思うんですけど」
 (鑑定質屋ゲンロク 森谷博章さん)「結局、商品をがんばって集めているんですけど、やっぱり円安の関係もあって…」

 というのも、近年は為替などの影響でブランド品の価格改定が続出。値上げは中古市場にまで及び、質店でも仕入れ価格が上がって商品が集めにくくなっているからです。
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 とはいえ、催事を盛り上げるため少しでも安く出品してほしいと心を鬼にして値下げを交渉します。

 (連藤さん)「こちらも目玉商品で、20万円割って税込み19万8000円でまた電卓たたいてくださいよ」
 (森谷さん)「定価が非常に…もともとの参考価格が40万円前後でございまして…」
 (連藤さん)「阪神の質流れでお客さまが喜んでもらえる」

 粘りの交渉で元の販売価格から約3万円引きの19万円になりました。さらに、質店が特別に用意してくれていたものがありました。
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 (連藤さん)「うわ!すごいすごい!」

 実は今回、連藤さんはお客さんの購買意欲を刺激しようと、催事の中では比較的手が届きやすい販売価格5万円~6万円の商品にも力を入れています。販売点数は過去最高となる1万5000点を見据えています。

バッグだけではなく「腕時計」も目玉商品…十分な品揃えで客を出迎える

 大阪の天神橋筋商店街にある質店「ロンドbyまるみや」。ここでは催事のために、なかなか出回らない希少な腕時計を用意してくれていました。

 (連藤さん)「これIWCなんですけど、なんと世界限定の商品。隣のこの時計は一品もの。ほとんど職人さんが手作りで作っているような商品ですので」

 価格はウン百万円と桁違い…。

 (ロンドbyまるみや 大西季恵さん)「このカルティエも参考価格でいうとざっくり700万円~800万円くらい(するのではないかと)。おそらく現行品では出ていないのかなとは思います」
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 連藤さんのお願いならと目玉となる商品が徐々に集まります。探していたはやりの小さなバッグもしっかり用意してくれていました。

 (連藤さん)「今は若い方とかちょっとお出かけの時とか小さめのやつが人気があるようで」
 (大西さん)「小さいものがはやってますよね」
 (阪神梅田本店 西山桃代さん)「お財布とかも小さかったりしますもんね」
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 連藤さんの商品集めはまだまだ続きます。お盆前、連藤さんは出店予定の質店に1件1件電話をかけていました。

 (電話をかける連藤さん)「小さいショルダーバッグみたいな、ああいったものはすごく今はやっているっていう話ですし、若い方がおしゃれで持っているのをよく見かけるんですけど…」

 集客できないコロナ禍の3年半は連藤さんにとっても苦しい時期でした。だからこそ、晴れて開催できる今回は18万点という十分な品揃えで客を出迎えたいと意気込みます。

阪神梅田本店でも「買い取り会場」を設けて品揃えの充実を図る

 一方、質店に商品を集めてもらうため、阪神自らも客からの買い取りの場を設けて品揃えの充実を図ります。
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 ある女性は高級バッグをいくつも持ち込みました。買い取りの仕組みは簡単。複数の質店が一斉に商品に値をつけて一番高いところが買い取ります。果たして査定は?

 「いきますよ、せーのでどうぞ!2万4500万円、1万8000円、1万5500円、1万4000円」
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 このバッグは2万4500円で競り落とされました。
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 「せーのでどうぞ!4万3000円、3万9000円、4万4000円、3万6000円」
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 こちらのバッグは4万4000円に。

 (売りに訪れた客)「ヴィトンは好きだったんですよ、丈夫やし。だけどね、年取ってくると重いの。でもよかったー来て」
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 買い取り会場の様子を見に来た連藤さんも商品の集まり具合に一安心。

 (連藤さん)「即、商品に出せそうなものがたくさん来ていますので。状態のいい商品ばかりが集まっていますね。(Q18万点集まりそう?)なんとか集まると思いますね」

 8月30日、いよいよ開催が翌日に迫り、半年前からかき集めてきた18万点がみるみるうちに売り場に並びます。

催事当日…大勢の客が訪れて大賑わい!連藤さん『うれしいですね』

 そして当日。質流れバザールを成功させるため、開店ぎりぎりまで店舗への指示を出す連藤さん。

 午前10時、営業が始まるとすぐに会場は多くの人でいっぱいに。5万円~6万円の特別提供品のワゴンにも、集めに集めた18万点からお宝を探しに人々が殺到します。

 連藤さんの読み通り、小さなバッグを求める人もいました。
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 (連藤さん)「うれしいですね。また土日に向かって商品を投入しますし。毎日新鮮なものがお客さまに見ていただけたらなと思います」

 今回も無事開催された質流れバザール。お客さんの笑顔のために連藤さんはきょうもお宝を集めます。