夏から秋にかけて猛威をふるう「スズメバチ」。民家の軒下などに巣をつくり、住民の悩みの種になっています。猛暑のなか、危険なスズメバチと戦うハチ駆除の現場を取材しました。

 全身を覆う防護服に身を包み作業にあたるのは「はち駆除レスキュー亀岡」の大島悦史さん。

 (大島さん)「暑いです。熱中症になるか(ハチに)刺されるか」

 この日、最初の依頼は京都府亀岡市にある木造2階建ての民家です。

 (大島さん)「2階の通気口の中にハチが入っている状態です」
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 屋根裏に「キイロスズメバチ」の巣があるというのです。キイロスズメバチは屋根裏のほかにも、納屋に置いていた段ボール箱に巣をつくったり、缶に残ったジュースなどもエサにしたりするため、都市部でも巣作りが行われることもあるといいます。

 (大島さん)「(キイロスズメバチは)一番性格が悪いというか、しつこくて飛び方が乱雑で集団で襲ってきます。毒性も強いです」

 スズメバチが巣をつくった民家の住民は次のように話します。

 (住民)「めっちゃ怖いですよ。何回かは家の中に入られている。(Qどれくらい前からハチがいると分かった?)おそらく6月終わり。飛び回っているのが見えたので」

 巣作りの最盛期は夏から秋。働きバチが活発化するため、ハチに刺される被害も増加します。最悪の場合、毒によるアレルギー性ショックで死に至るケースもあります。
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 今回は屋根裏に上がり、直接、巣を取り除きます。大島さん、さっそく屋根裏に入ると、すぐに巣を発見しました。

 (大島さん)「もう見えていますので、巣が…。(ハチが)たいぶ警戒しています。古い巣が一つと、いま稼働している巣が一つです」

 古い巣にはハチはいませんが、今年の巣の周りにはハチが飛び交っています。

 まず、強力な殺虫スプレーをハチの巣に噴射して一網打尽にします。ハチの活動が収まったところを狙い、ヘラで巣を根元から取り除きます。
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 巣はサッカーボールほどの大きさでしたが、放置しておくと巣はどんどん巨大化していき、大きいものだと直径1mにもなり、危険が増すのです。

 (住民)「怖すぎて…。(Q駆除して一安心ですか?)そうですね」

 今年は猛暑の影響か、例年より巣が大きくなる時期が早く、大島さんの会社にも駆除の依頼が増えているといいます。
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 この日はもう一軒、駆除の依頼がありました。倉庫の軒下に古い巣が3つ並び、その横にあるのが今年の巣だといいます。

 (大島さん)「(Q毎年巣を変える?)そうです、古い巣は使わないです。秋に新女王バチが生まれるんです。その女王バチが春に1匹で巣をつくる」

 依頼した夫婦は、今年の夏は来客が多いこともあり、駆除を頼みました。

 (住民)「今年は(巣作りを)全然やらないなと思っていたんですよ。おととい、パッと上を見たら巣ができていてね」
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 大島さん、長く伸ばしたはしごを上り、撃退します。先ほどと同じ手順で、殺虫スプレーでハチの動きを止めてから巣を取り除きます。
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   (住民)「これで安心やと思って、助かります」
 (大島さん)「(巣を駆除するのは)早ければ早い方がいいと思います」

 危険なスズメバチ。ハチバスター大島さんの戦いはまだまだ続きます。

スズメバチの攻撃は「偵察→威嚇→攻撃」 「カチカチ音」に注意!

 日本昆虫学会の会員でスズメバチ研究者の中村雅雄さんに、特性について聞きました。

―――今年のスズメバチの傾向について、いかがですか?
「ハチの巣の数が多いんじゃなくて、春先が早かったので、巣がでっかくなって、それでいつもより早くハチの巣の脅威を感じているのではないかと思います」

―――巣が大きいとどんなことが考えられますか?
「働きバチの数が非常に多くなりますから、周りや何かに危害を加えそうになるような、そういう状況が生まれるわけです」

―――巣が大きければ大きいほど卵を産む面積が広がるということですか?
「巣が大きくなるっていうことは、幼虫の数を増やして、巣を大きくしていくということになると思います。ハチは春先に小さいところで巣を作るんですよ、地面とか。それである程度100匹ぐらいになったときに、移住するんですよね」

―――スズメバチの攻撃は、偵察→威嚇→攻撃という流れになっているということで、威嚇のときにカチカチという音を発するそうです。このカチカチという音が聞こえたら、もう危ないというふうに思った方がいいですか?
「もちろんそうです。ハチよっては連続的に刺す行動に入っていきますから。ただ、このカチカチ音は、後で『そういう音が聞こえたな』っていう感じですね。慣れてないとわからないと思います」
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―――ハチは上下左右の動きは敏感に反応します。ただ、前後の動きはやや見えにくいということです。なので、静かに後ずさる、すっとかがんでゆっくり後ろにさがるというのが一番正しい行動と思っていいですか?
「はい。なぜかというと、ハチの顔をよく見ていただくとわかりますが、目がどちらかといえば上によく視線がきくんですよね。下がききにくいので、一旦しゃがむと、その敵を見失うということもあるんです」

―――ひらひらするもの・黒いもの・香水や化粧品の香りはハチが興奮するということで、手で払ったりほうきを振り回したりするなどもやめたほうがいいということです。一方、中村さんによりますと、木酢液やコパイバオイル配合の虫除けはハチの興奮を静める効果があるということです。
「実験でやってみたんですけれども、木酢液とか、肌に塗る薬の中には虫をよけるものがあるんですけど、特にスズメバチの興奮状態を違う方向に向けさせるという働きがあります。周りに来たときにスプレーで噴射する感じで。黒いものは、“一説によると”ですが、クマを連想させると。それで、黒いものに刺激されてくる、ターゲットにするわけです。そして、髪の毛にもやっぱり来るんですよ。白髪の人は大丈夫かっていうとそうじゃなくて、白髪の人も刺されることがありますので、髪の毛そのものも、向こうから見れば対象になります」