「10円で遊べるレトロゲーム」を楽しめる駄菓子屋が神戸市にあります。夏休み、昭和な空間に夢中になる令和の子どもたちや、昔を懐かしむ大人たちの様子を定点観測しました。

1回10円…昔懐かしいレトロゲームを楽しめる駄菓子屋

 「じゃんけんぽん!フィーバー」

 そこには懐かしい空気が漂っています。30年以上前に作られたゲーム機たち。

 (客)「ずっとこれにハマっていますね。単純なんですけれどもそこがまたいい」

 かつて、ショッピングセンターなどで活躍していたレトロなゲームを求めて…。真夏の休日、店を訪れる人たちを定点観測しました。
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 神戸市灘区、JR六甲道駅にほど近い幹線道路沿いのビルにその店はあります。「10円ゲーム&駄菓子屋」の営業は原則週に4日で、月・木は午後3時~午後6時30分、土・日・祝日は午前11時30分~午後5時30分です。
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 店主の千木良和哉さん(43)が5年前にオープンしたこの店、入り口には駄菓子、奥に進むと全国から買い集めた約20種類のレトロなゲームが並びます。どれも1回10円ほどで遊べます。
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 (千木良さん)「これが一番人気の『ジャンケンマンジャックポット』。この子とじゃんけんするんですよ。これが自分の手で。ルーレットが回って止まった数字の分だけ、これだと2枚でます」
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 (千木良さん)「個人的におすすめは『ねらってピョン』ってゲームです。パットを叩いてお皿に乗れば(表示された)枚数が出てくる」

 ネットオークションで約3万円だったというゲーム機。単純ながら攻略の難しさはこの店で一番。そこにハマる人も多いんだそうです。

 (千木良さん)「これは完全実力機なので自分のセンスが問われる。あー乗りました!これで17枚です」

公文の行き帰りにメダルゲーム…常連の子どもたちは腕前もメキメキ上達

 午前11時45分、この日最初のお客さんです。100円で11枚のメダルを受け取ると思い思いにゲームを楽しみます。近くに住む小学2年生の西田幸世くん(8)、お母さんと弟とやってきました。

 (幸世くん)「公文の帰りと行きに来ている。メダルゲームをしたりするのが楽しい」

 2年前から週に2回は来ているという幸世くん。腕前もメキメキと上達し、『ねらってピョン』では…。
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 (幸世くん)「よし!14枚ゲット。乗っかった!17枚!(Qコツがあるの?)2枚入れてお皿が近くになったときが取りやすい。2連続で17枚!」
   (母親)「すごいすごい」

 30分ほど遊んだ後は駄菓子を買って帰ります。

 (千木良さん)「はいどうぞー、おつりおつり」
 (幸世くん)「おつりはもらっとこ」
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 その後も次々とお客さんがやっています。

 (小学6年生)「運ゲーもあれば技術が必要なゲームもあるし、それぞれいろんな楽しみ方があるから」
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 4人の子どもたちと来店したこちらの家族は、駄菓子を買ってここでおやつにするのが定番だそうです。

 (子ども)「(Q何味?)お肉味」
 (父親)「公文に連れて行っていて、3人4人だと早く終わる子と時間がかかる子がいるので、待ち時間に店を使っていて。公文を頑張ったらゲームができるよという感じで。うちでゲームをやっていないから、唯一のゲーム機会です」
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 隣の東灘区から初めて来たという親子。ほかでは見かけないゲームばかり、やり方を教わってチャレンジします。

 (小学5年生)「(じゃんけんゲームのルーレットを押す)」
 (千木良さん)「勝った!あー16枚!16枚は一番出にくいねん、50枚より出にくいねん」

 初めてのレトロゲームの感想は…。

 (小学5年生)「一回来てみたかったので。結構遊べる」
    (母親)「これやった気がします、昔。見ていて懐かしいなと思って楽しかったです」

店を始めたきっかけは子どものつぶやき…『ここに駄菓子屋があったらええな』

 午後1時30分、客が途絶えると店主の千木良さんが動き始めました。古いゲーム機なので不具合は日常茶飯事。その都度、直さなければいけません。

 (千木良さん)「修理も難しいしどこが壊れているのか調べるのも難しいので。ジャンケンマンはメダルホッパー(払い出し機)が壊れちゃってどうしても無かったので、同じゲーム機を買ってこっちからメダルホッパーを移植して動くようにしています」
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 そんな千木良さん、実は本業は人材派遣会社の運営。でも、どうしてこの店を始めたのでしょうか。

 (千木良さん)「(このビルに)習い事に通っている男の子が『ここに駄菓子屋があったらええな』とつぶやいたんですよ。それが耳に入って。最初はここに長い机を1個置いてここだけでした」

 最初は事務所の一角に駄菓子を置き、ゲーム機は1台だけだったといいます。ところが、触ってみるとおもしろかったので…。

 (千木良さん)「ここが人材派遣の事務のスペース。いまこれだけになっちゃったんです」

 どんどんゲーム機が増え、いまでは地元で愛されるレトロなゲームセンターに変貌しました。

ハマるのは子どもだけでなく大人も…『昔は縁日や夜店でやりました』

 大人も魅了するレトロゲーム。別の日にはこんなお客さんも…。

 (週1回来店する70歳の男性)「ちょっとハマりだしてね。単純なようなんですけれども、やっているとおもしろいんですよ。昔は縁日とか夜店でやりましたけれどもね、大人になったら普通のパチンコをして歳いったらこれですよ。1回10円ですむのでね、1000円もあればかなり遊べますよね」

 5年前に仕事をリタイアしたという男性。昔のパチンコを思わせるこのゲームにハマっているんだそうです。
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 こちらの女性は駄菓子を真剣に選びます。

 (月1回来店する40代の女性)「推し活をしていて、推し友に会いに行くときにお土産交換で。推しのナンバーにちなんだ駄菓子を渡すみたいな。大人になったら駄菓子屋さんに行かないから、『懐かしい』って盛り上がるので」

 チョコは1個15円。手軽に買えるのにとても喜んでくれるので毎月買いに来ているんだそうです。

手慣れた様子で遊ぶ娘の姿を見て『パパより上手やな』

 午後4時、手慣れた様子で玉をはじくのは…なんともかわいらしいお客さん。3歳の松井小春ちゃん。1歳の時から来ている常連さんです。
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  (小春ちゃん)「(Qどうですか?)入ったらいいの。数字同じやつだよ」
 (父・隆朋さん)「最初は僕がこれをやって子どもはメダルゲームをやっていたんですけど、僕がこればっかりやってるからやりたくなっちゃって。懐かしいなと思って」

  (小春ちゃん)「詰まっちゃいました」
  (千木良さん)「よく詰まるねんな。はい、これで出ました。小春ちゃんどーぞ」
 (父・隆朋さん)「あ、出てきた出てきた」
  (千木良さん)「10枚やー!」
 (父・隆朋さん)「パパより上手やな。いい感じ?」
  (小春ちゃん)「いっぱいメダルが出ちゃった」
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 午後5時30分、閉店の時間です。

 (千木良さん)「やってよかったのはやっぱり子どもたちの笑顔が見られることですね。こういうところは少なくなっているので、できる限りは続けていこうと思っています」

 値上げが続く時代に10円で笑顔を咲かせる場所がここにあります。