全盲の小学生&おかんの漫才コンビ「おちゃのは」。生まれたときから目が見えなかったという津田愛土くん(10)、漫才に対する情熱がすごいんです。母・美穂子さんとのコンビで愛土くんが挑戦したかった「M-1グランプリ」に今年出場します。2人を応援すべく、“おかん漫才”でM-1を制したミルクボーイがサプライズで突撃しました!

目指せ「M-1」予選1回戦突破!全盲の小学生&おかんの挑戦

 「はいどーもー。親子漫才の『おちゃのは』です。よろしくお願いしまーす」

 公園で漫才のネタ合わせをする津田愛土くん(10)。母親の美穂子さんと親子の漫才コンビ「おちゃのは」を組んでいます。コンビ結成4か月、「M-1グランプリ2023」の予選1回戦突破を目標に日々練習しているんです。
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 3人兄弟の末っ子として生まれた愛土くん。小さいころからなるべく自分の力でやり遂げることにこだわり、習い事にも前向きに挑戦してきました。漫才をするときにもその前向きさは生かされています。
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 (津田愛土くん)「(Q目が見えないことで漫才するときに困ることはある?)ないんですよね、それが。最初は困るかと思ったんですけど、見ながらやらなあかんことってないじゃないですか。(Qネタ覚えるとき大変じゃない?)耳コピで覚えれば済むかなという感じ。耳コピもしにくいけど大変じゃない」
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 愛土くんの目が見えないことがわかったのは3か月健診のときでした。専門医のいる大学病院まで行き、全盲と診断されました。
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 (母 美穂子さん)「全盲だとわかったとき、がーんって落ち込んだけど、でもわーって泣いたり騒いだり、どうしようと言ってこの子が幸せになれるんやったらいいけど、違うなと思って。この子のためにできることを見つけて最善を尽くそうとチェンジした」

お笑いを好きになったきっかけは「ミルクボーイ」

 愛土くんがお笑いに興味を持ったのは、ある芸人の漫才を聞いたことがきっかけだといいます。

 (愛土くん)「(Q元々お笑いが好きだった?)うん、実は好きになったきっかけがミルクボーイ。学校の先生に聞いてきてって言われて、それで聞いたらけっこうおもしろくて好きになった。(Qおかんの好きなもの?)そうそうそう。ミルクボーイ見ている人ならご存じ」
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 初めはミルクボーイのネタを真似することから始まり、小学3年生のときには友達とコンビを組み、自分たちで作ったネタをクラスのみんなの前で披露しました。

 【教室で漫才をする様子】
 (愛土くん)「いつ止める?」
 (相方)「今でしょ!」
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 3歳からの幼なじみに学校での愛土くんの様子を聞いてみると。

 (大本優真くん)「学校でも普段も面白いこと言うし、学校生活でも漫才関係なしに笑わせてくれる」
 (畑晴稀くん)「M-1って聞いたときにまじでびっくりした。M-1に出られるだけで愛くんはすごいと思うし、予選とかだったとしても。もちろん勝って進んでほしい」

予選が迫る中…親子2人3脚でネタを仕上げていく

 大阪市にある「こどもお笑い道場」。お笑いが好きな地域の小・中学生20人ほどが現役のお笑い芸人と一緒に漫才の練習をしています。M-1予選が1か月後に迫ったこの日、愛土くんも予選に挑むネタの完成度を見てもらうことにしました。

 【漫才を見せる様子】
 (愛土くん)「はいどうもー、愛土です。目が見えないので白杖を持っています。これ、めっちゃ伸びるでー」
 (美穂子さん)「趣味はダイエット、特技はリバウンド。ママでーす!」
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 (道場の先生)「最初のつかみの杖のところをなんかちょっとやってみても面白いかな。(銃みたいに)バン!バン!とか」
 (美穂子さん)「あー、白杖でもうちょっと遊ぼう」

 愛土くんだからできる白杖を使ったつかみをさらに生かすよう助言をもらいます。
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 道場ではもちろん、友達の前や、時には移動中の車の中で、予選までの限られた時間の中で親子2人でネタを仕上げていきます。

 (愛土くん)「愛土です。目が見えないので…」
 (美穂子さん)「『目が見えないので』が急にテンション下がっている」
 (愛土くん)「目が見えないので、白杖を持っています」
 (美穂子さん)「いい感じいい感じ」

車のエンジン音をYouTubeで楽しむ!?

 お笑いに熱中する愛土くんが同じくらい好きなものが車。ミニカーのコレクションは200台以上もありますが、ほとんどを触っただけでどんな車か特定できます。愛土くんに1台のミニカーを渡してみると…。
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 (愛土くん)「ベンツのゲレンデ。例えばこの高さとか。だってミニカーでこんな高さがあるのゲレンデくらいだし、このでっかいスペアタイヤ。(Q触ってわかるという能力は高い?)多分、特にみんなより目が見えていないのが、触ってわかる能力が高いと思う」
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 さらに車のエンジン音をYouTubeで聞くほどのマニアぶり。耳でも車を楽しんでいます。

 お笑いと車、2つの好きなものをうまく生かし、M-1に挑むネタは車のYouTuberをおもしろおかしく紹介するもので勝負することにしました。

ネタ合わせする親子のもとに…ミルクボーイの2人が!

 そんな愛土くんのもとにM-1王者ミルクボーイの内海崇さん・駒場孝さんがアドバイスに向かいます。

 (内海さん)「どうもミルクボーイです。きょうは愛土くんとお母さんがM-1グランプリ1回戦突破に向けて公園でネタ合わせをするという情報を手に入れましたので、サプライズで応援行きましょう」
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 練習している愛土くんとお母さんに近づいていきます。ミルクボーイが来ることを何も知らされていない愛土くん。はたしてどんな反応をするのでしょうか。

 (美穂子さん)「もうすぐM-1の1回戦やん。ママとあいくんの漫才もレベルアップしたほうが良いかなと思って、きょう実は特別ゲストを呼んだのです。来てもらいますよ。はい、じゃあお願いしまーす」

 (内海さん)「愛土くんはじめましてー。だれかわかりますか?」
 (愛土くん)「まさか?あの2人!?」
 (内海さん)「言ってみて!」
 (愛土くん)「ミルクボーイの2人?」
 (内海さん)「そう、愛土くんやないかー」
 (愛土くん)「ええええ」

 愛土くん、本物の登場に大興奮です。

 (美穂子さん)「実物が現れてどうやった?」
 (愛土くん)「びっくりした。だって、いると思っていなかったもん」
 (駒場さん)「練習していただけやもんな、きょうは」
 (内海さん)「愛土くん、漫才、ミルクボーイに見せてくれますか?」
 (愛土くん)「はい」
 (内海さん)「いいですか。では愛土くん漫才お願いします」
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 憧れの2人の前で、ネタをお披露目です。

 (愛土くん&美穂子さん)「はいどーもー。親子漫才のおちゃのはです。よろしくお願いします」
 (愛土くん)「愛土です。目が見えないので白杖を持っています。これめっちゃ伸びるで」
 (美穂子さん)「如意棒みたいだね。趣味はダイエット、特技はリバウンド、ママでーす」
 (愛土くん)「バーン、バン、バン」
 (美穂子さん)「あいくん、何をしているのかな」
 (愛土くん)「お客さん撃ってんねん」
 (美穂子さん)「お客さん大事やからやめてくれる」
 (愛土くん)「ついでにこうやったら耳かきにもなります」
 (美穂子さん)「いやいや長いし太いし、無理やから。そんなんして使うもんちゃうからね。きょうは漫才しにきましたから、漫才。オッケー?」
 (愛土くん)「はい」
 (美穂子さん)「愛くんが普段して楽しいこと何か教えて?」
 (愛土くん)「YouTube聞いている」
 (美穂子さん)「YouTube聞くの?じゃあさママ、スーパーイケてる今どきママやから、あいくんの好きなYouTube当ててみるし、応援してくれる?」
 (愛土くん)「若者ぶってるけどもうすぐ50歳、頑張れー」
 (美穂子さん)「大きな声で悪口を言ったね。まぁいいよ、ママ頑張るからね。じゃあ王道でヒカキン」
 (愛土くん)「普通やな」
 (美穂子さん)「あ、そう。じゃあ変化球でひろゆきさん」
 (愛土くん)「そんなわけないやろ」
 (美穂子さん)「じゃあもうわからんし、あいくんの好きなYouTube教えてよ」
 (愛土くん)「おちょピット」
 (美穂子さん)「おちょピット?なんやそのおちょけた名前は。登録者数何人おんの?」
 (愛土くん)「9万8000人」
 (美穂子さん)「9万8000人!えっ、めっちゃおるやん、マジで。ちょっと舐めとった。じゃあ他は?」
 (愛土くん)「まーさんガレージ」
 (美穂子さん)「まーさんガレージ。登録者数は?」
 (愛土くん)「30万6000人」
 (美穂子さん)「30万6000人、マジで?めっちゃ馬鹿にしていた。それは失礼しました。めっちゃ多いやん。じゃああいくんが一番好きなYouTuberさん言ったげて」
 (愛土くん)「メンテナンスフリー」
 (美穂子さん)「メンテナンスフリー、登録者数言ってあげて」
 (愛土くん)「21人」
 (美穂子さん)「21人?めちゃ少ないやん。愛くんのクラスの友達より少ないやん、どういうこと。内容どんなのか教えてよ」
 (愛土くん)「ケーターハムスーパー7、1600GTスプリントのOHVエンジン下ろします」
 (美穂子さん)「もう何が何だかわからへん。ようは何、車の修理動画ってこと?」
 (愛土くん)「うん」
 (美穂子さん)「車だけに大暴走やね」
 (愛土くん)「ママのことも修理してあげよか」
 (美穂子さん)「わけわからんし、やめさせてもらうわ」
 (愛土くん&美穂子さん)「どうも、ありがとうございました」

「息ぴったりやん」内海さん・駒場さん大絶賛

 (内海さん)「おーすごいやん」
 (駒場さん)「すごいな」
 (内海さん)「ナイス漫才」
 (駒場さん)「ありがとう、すごい」
 (内海さん)「めっちゃ練習したんちゃうこれ。息ぴったりやん」
 (愛土くん)「レベルが違うと思う、ミルクボーイとは」
 (美穂子さん)「そらそうや」
 (内海さん)「お母さんと息ぴったりやね」
 (駒場さん)「堂々としているし」
 (内海さん)「声も大きいしな」
 (愛土くん)「公園やから、ちょっと響くのもあるかもしれない」
 (内海さん)「冷静やな!」
 (愛土くん)「実際はちょっと声大きいかも」
 (駒場さん)「NSCとか行ってた?何か仕組み全部わかっているな」
 (内海さん)「“漫才とは”をわかっている」
 (駒場さん)「わかっているわかっている」

 (内海さん)「愛土くんは目が見えないことをネタにしていたけど、どう思うの?」
 (愛土くん)「それを知ってもらうことはいいことだと思う」
 (駒場さん)「最初にそれでボケてくれるから、こっちもおもしろいってなるから入りやすいね。耳かきにもなるとか言ってくれたらこっちも笑える」
 (内海さん)「それはだれが考えたん?」
 (愛土くん)「2人」

愛土くんの悩みに「アドバイス」

 愛土くん、漫才をする上でいつも気になっていることがあるようで…。

 (美穂子さん)「こんな機会ないからさ、聞いときたいことない?」
 (内海さん)「何でもいいよ、何でも聞いて」
 (愛土くん)「滑舌問題。ちょっと滑舌悪いなというのがある」
 (内海さん)「愛土くんとお母さんは何回もネタ合わせしているからネタが入っていると思うんですよ。でもお客さんはその日に初めて聞くから、ちょっとゆっくり、お客さんに伝えるようにしゃべったほうがいいかもね」

 (内海さん)「M-1の1回戦に向けて、愛土くん、意気込みを教えてください」
 (愛土くん)「初戦突破と、あと滑舌をなおす」
 (駒場さん)「大丈夫大丈夫。僕もぜんぜん滑舌良いほうじゃないし」
 (内海さん)「そうよ、味よ」
 (内海さん)「愛土くん、応援しているからM-1・1回戦、頑張ってね!」
 (駒場さん)「頑張ってね!」