ビッグモーターの保険料水増し請求問題。修理のために持ち込まれた車にわざと傷を付け、損保会社3社に対して自動車保険の保険金を不正に水増し請求していたことが明らかになりました。一体、内部でどのようなことが行われていたのか。街の自動車修理工場に話を聞いてみました。

「誤解を恐れずに言うと、やろうと思えばできる」

 大阪府豊中市で修理工場を営む細田宗範さんは、今回の不正発覚にそれほど驚かなかったといいます。

 (板金塗装「BEEF IT CARS」 細田宗範代表取締役)
 「正直、誤解を恐れずに言うと、不正はやろうと思えばできると思います」

 また、ここで働く、この道45年の板金塗装の職人は。

 (ベテラン板金職人)
 「昭和の時代から僕も長いことやっているので(水増し不正は)やっぱりありましたよね。(Q現場を目にしたことも?)あります」

 今回、不正請求の手口のひとつとして報告書に記されているのが「タワーけん引の偽装」。車内部の骨格となるフレーム部分がへこんだ際に、最大20トンもの力で引っ張って直すという作業ですが、例えば問題のないフレームにチェーンをかけるだけで…。

 (ベテラン板金職人)「これで今見た感じ、どう見てもすごい修理をしているように見えません?」
 (大吉アナウンサー)「素人が見ていると修理をしているように見える」

 ビッグモーターでは、このタワーけん引修理をしたかのような偽装写真を撮影し、保険会社へ水増し請求していたとみられます。

 (ベテラン板金職人)
 「写真判断でこれだけの金額が必要ですよねと保険金が振り込まれるという形。(Q保険金にどれくらいの差がある?)タワーけん引の偽装で10万円くらいは変わってきますよね」

「車の医者が勝手に違うところを傷付けてお金もらうって…」

 現場の職人としては、このような偽装は絶対に許せることではないと話します。

 (ベテラン板金職人)
 「『車の医者』としてやっているつもりなので。でも医者だからと言ったって、勝手に違うところを傷付けて縫っちゃって、かかってもいないのに『病気やで』って言ってウソついてお金をもらうっていうのも。そんなことをしてまでお金欲しいって、ようわからないですね」

 また、特別調査委員会からの調査報告書によりますと、ビッグモーターでは2014年から数年の間に板金塗装を担う修理工場を倍増させていて、現場の作業員には未経験者が多く配置されていました。

 細田社長は不正がはびこった原因のひとつに職人の経験の浅さを指摘します。

 (板金塗装「BEEF IT CARS」 細田宗範代表取締役)
 「(Q新人から職人を育てていくのはどれくらいかかる?)基本ベースは同じなんですけど車種によっても全然違ったりするので、それを毎回毎回教えていって、早い人でも3年かかる。そんな1年2年ですぐにっていう職種ではないですね」

 こちらの修理工場では、顧客との信頼関係を大切にするために、修理の様子を一部YouTubeで公開しています。

 (板金塗装「BEEF IT CARS」 細田宗範代表取締役)
 「言葉で伝わらない部分があるので、それを動画にして出すと、お客さんが喜んでくれるというのはあります。自分たちのやっている仕事を『お客さんに見せるべきではない』という考え方の職人も多いと思うんですよ。それが当たり前だったけど、今回の事件が、時代は変わってそうじゃないよねというひとつのきっかけにはなったかな、なるんじゃないかなと思います」