2023年3月に起きた死亡事故を受けて運航を見合わせていた京都の「保津川下り」。7月17日、約4か月ぶりに再開しました。運航再開までの道のりと再開初日の様子を取材しました。

 7月17日、ひさびさに保津川に戻った乗客の笑顔、いつもの様子。この川で事故が起きたのは約4か月前のことでした。
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 3月28日、「保津川下り」で船が転覆。乗客は無事でしたが、船頭の田中三郎さん(当時51)と、関雅有さん(当時40)が死亡。ともに船頭歴18年を超えるベテランでした。
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 当時乗船していた客は次のように話します。

 (当時乗船していた客)
 「大きな岩に乗りあげるような形で正面から勢いよくぶち当たって、船が転覆、回転して落ちていった」

 事故の原因となったのは「空舵」という操船ミス。運航組合によりますと、流れの激しい場所の近くで舵の操作を誤ったことで転覆したということです。さらに…。

 (当時乗船していた客)
 「救命胴衣を開こうとしたんですが、ひもがあるはずと思って探したんですけど見つけられずに、これはやばいしこれ(救命胴衣)に頼るのはやめようと思って」
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 乗客の半数ほどは自動で膨らむ救命胴衣でしたが、亡くなった船頭をはじめ、手動で膨らませるものだった人は、救命胴衣が膨らんでいなかったといいます。

 (保津川遊船企業組合 豊田知八代表理事 2023年3月)
 「もし自動式だったら(助かった)という可能性は本当に思います」
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 船頭歴15年の山内友貴さん。亡くなった2人は大先輩でした。

 (船頭 山内友貴さん)
 「最初はあんまり受け入れられなかったって感じでしたね、『うそや』という感じがありました。(田中さんは)ずっとニコニコしていて優しい、ほんまに優しい人でしたね。船で使う道具をもらったりとか、いろいろ教えてもらったりしましたね」
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 運航見合わせとなった「保津川下り」。こうした中、事故の教訓を生かして様々な訓練が行われました。運航組合では専門家の指導のもと救助訓練を実施。乗客の救助方法や船頭自身の安全確保の仕方を実践しながら学びました。

 (船頭 山内友貴さん)
 「教えてもらって分かることもあったので、ほんまめっちゃ勉強になりました。きょう聞いた説明をいかに簡潔に丁寧にお客さんに伝えるかとかが大事になってくるなと思います」
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 そして7月17日、約4か月ぶりの運航再開。

 (保津川遊船企業組合 豊田知八代表理事)
 「しっかりと安全運航に徹底してお客さまを嵐山までお送りする」
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 再開にあたり、出航できる水位の基準をより厳しくしたほか、身長80cm以下の乗客の乗船制限を新たに設けました。また、救命胴衣は「自動で膨らむもの」と「ベスト式のもの」に変更。船頭の落下を防ぐため、足を固定するためのストラップも付けました。

 満員の乗客を乗せて船が保津川を下ります。渓谷に戻って来たひさびさの日常、変わらない夏の様子です。

 (乗船した客)
 「楽しみました」
 「特に不安な点はなかったですね。ちゃんと案内とかもしっかりしてくれて、ライフジャケットもちゃんと着せてくれたので」

 (船頭 山内友貴さん)
 「いろいろシステムが新しくなって大変なんですけど、早く慣れて順応する。安心して乗ってもらって、あとは楽しんでもらえたら」