「夏の甲子園」を目指して各地で熱戦が繰り広げられています。そんな中でレギュラーになれずに3年の夏を迎えた選手たちの一足早い最終戦を取材しました。

一度も背番号をもらえず3年間「悔いなく終わりたい。ホームラン打ちます」

 6月23日、近江高校と彦根東高校の特別な試合が行われました。ベンチ入りできなかった3年生たちにとっての最後の試合『引退試合』です。
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 (近江高校 野球部員)
 「きょうは最初で最後の俺ら控えメンバーの主役の場面やと思うんで。元気出していきましょう!」
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 今年のセンバツで滋賀県勢初の準優勝に輝いた近江高校。今や全国有数の強豪校です。
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 3年生の松岡翔希君も甲子園を目指して近江高校にやって来ました。ただ100人を超える部員の中で公式戦に出ることができるのはわずか20人足らず。レギュラー争いはし烈です。松岡君はこの3年間、一度も背番号を貰うことができませんでした。

 (近江高校野球部・3年 松岡翔希君)
 「(甲子園で)楽しそうに野球をやっている姿を見てうらやましいと思ったんですけど、メンバーで活躍できない分、(裏方として)自分から積極的に動こうと思ってやっていました」

 ベンチに入ることができなかった3年生のための引退試合は、夏の甲子園への出場をかけた地方大会が始まる前に行われます。取材した日、試合に出場する3年生に背番号が配られました。松岡君は背番号8番を受け取りました。

 (部員らの前で話す松岡君)
 「1年生のときに野球を辞めそうになって、とても苦しい思いをしたけど、やっぱり今ここに立てているのは仲間のおかげやと思う。応援よろしくお願いします」
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 初めてもらった近江高校の背番号。

 (近江高校野球部・3年 松岡翔希君)
 「悔いなく終わりたいと思っているので。最後はかっこいい姿を見せて終われたらいいなと思っています。ホームラン打ちます」

両親も見守る引退試合で『高校生活初』の…

 そして6月23日、引退試合が行われました。この日の試合をサポートするのはレギュラーの選手たちです。松岡君は「1番・センター」で出場。松岡君の母・美穂さんと父・義雄さんも見守る中、迎えた第1打席。
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 見事、ツーベースヒット。これが先制点につながります。
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 (レギュラーメンバー 津田基君)
 「学校生活から控えとかレギュラーとか関係なく全員が仲が良いので、普段見られない姿が見れて、とてもかっこいいです」
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 次の打席では惜しくも凡退となりましたが、最初で最後の晴れ舞台に一球一球、全力で挑みます。

 そして1点リードで迎えた5回。再び打席に入った松岡君。なんと高校に入って初めてのホームランを放ちます。
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 (松岡君の母 美穂さん)
 「最後だし長打を1本でも多く打ってと言ったら、頑張ると言ってくれていたので、嬉しかったです」

松岡くん「ありがとう」 母「自慢の息子」

 近江高校対彦根東高校は9対5で試合終了。有終の美を飾って選手生活に区切りを付けました。厳しい練習に耐えて喜怒哀楽を共にしたレギュラメンバーたちも一緒にその時を噛み締めていました。
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 そしてこれまで支えてくれた両親の下へ。

(母・美穂さん)「久しぶりに見た」
   (松岡君)「ほんまに久々に打ったわ」
(母・美穂さん)「打ったね。すごいすごい」
   (松岡君)「気持ちよかった」
(母・美穂さん)「びっくりした」
   (松岡君)「ありがとう。きょうは」
(母・美穂さん)「いえいえ。初めてやな、そんなこと言ってくれるの」

 (近江高校野球部・3年 松岡翔希君)
 「やっぱり18年間育ててもらったので、感謝の気持ちのこもったホームランでしたね」
 (松岡君の母 美穂さん)
 「12年間、泣きながら練習して、努力して、やっと。すごい。自慢の息子になります」

 7月16日に地方大会初戦を迎える予定の近江高校。最高の夏へ。チーム一丸となって甲子園を目指します。